マレーシアやシンガポールで親しまれている海南チキンライス。
CNNが選ぶThe world’s 50 best foodsに選ばれた食べ物になります。
この記事では、海南鶏飯の概要とマレーシアのチキンライスの種類&美味しく食べるためのポイントについて紹介します。
海南チキンライス(海南雞飯)とは?
マレーシアやシンガポールの“国民食”として、ローカルの人が日常的に口にする海南鶏飯。
鶏肉のスライスに、チキンストックで炊いたご飯とスープがセットになった鶏肉料理になります。
中国・海南の文昌鶏がベース
海南鶏飯のベースとなるのは、中国・海南島の名物料理である文昌鶏(Wénchāng jī/ウェンチャンジー)。
ウェンチャンチキンは、お湯のなかに丸鶏を入れて作られる鶏料理になります。
マラヤに渡った海南の人がアレンジを加えて誕生した
イギリスがマラヤを統治していたBritish Malaya(ブリティッシュマラヤ)の時代に、海南島からMalaya(マラヤ)に渡った人々が、現地で文昌鶏をアレンジし作り上げたものがマレーシアやシンガポールの海南鶏飯です。
1930年代〜1940年代頃に誕生したと言われています。
文昌鶏と海南鶏飯は何が異なる?
- 使用される鶏肉の種類や調理法
- ソースの種類
- ご飯の調理法
…などが異なると言われています。
柔らかくもありつつ、やや歯応えのある文昌鶏に対し、マレーシアやシンガポールの海南鶏飯は滑らかで柔らかい身が特徴です。
また、
- チリソースを加えて食べるところ
- 黄色味をおびているご飯があるところ
…は、マレーシアやシンガポールの海南チキンライスに見られるユニークな特徴です。
海南チキンライスの発祥地はシンガポールそれともマレーシア?
シンガポールは海南鶏飯を“国民食(National Dish)”とし、CNNのThe world’s 50 best foodsでもシンガポールの料理として紹介されているものの、起源説については明確になっていないところがあり、シンガポールとマレーシアの間で物議を醸しています。
ただ、一つ確かなことは、海南鶏飯は中国からマレー半島に渡った海南の人々が文昌鶏をベースに作ったものだと言うことで、タイのカオマンガイも同じような食べ物として知られています。
マレーシアにおけるチキンライスの呼び名
様々な言語が飛び交うマレーシアでは、英語のChicken Riceという表現以外に、
- マレー語:Nasi Ayam(ナシ アヤム)
- 標準中国語:鶏飯(ジーファン)
- 広東語:鶏飯(ガイファン)
- 福建語:鶏飯(ゲープイ)<ペナン福建語の場合>
…など、色々な呼び名が使われています。
ただ、お店で注文する時は、普通にチキンライスと言えばOKです。
マレーシアのチキンライスの種類
マレーシアのチキンライスのお店には、
- 白鶏(Steamed Chicken Rice)
- 焼鶏(Roasted Chicken Rice)
…という2種類のチキンライスがあります。
正統かつ伝統的な海南チキンライスと言われるものは、①の製法で作られるものになりますが、ローストしたチキンライスも定番です。
白鶏(Steamed Chicken)【蒸しチキン】
白っぽい見た目をしたSteamed Chicken Rice(スティームドチキンライス)。
注文時に”Steamed Chicken”のほか、英語ならWhite Chicken(ホワイトチキン)、中国語なら”白鶏”と言っても通じます。
丸鶏をグツグツ煮て茹でるのではなく、熱湯の余熱を利用して蒸らしつつじっくり火を通し、柔らかくしっとりした食感に仕上げています。
メニューではSteamedという言葉が使われていることが多いものの、Poachedという言葉の方がしっくりくる調理法であるため、Poached chicken rice Chicken Rice(ポーチドチキンライス)と呼ばれることもあります。
広東料理の白切鶏の影響を受けている
マラヤには広東省からの移民が多く、マレーシアやシンガポールの海南鶏飯は広東料理の影響受けていると言われています。
実際に、Steamed Chicken Riceの調理法は、海南料理の文昌鶏に広東料理の白切鶏の製法を付け加えてアレンジしたものになっています。
また、火を通した後に丸鶏を氷水に浸すことで、表面をツルツルにし、皮と身の間にゼリーのような独特な滑らかさを出すことができると言われているため、丸鶏を氷水に通すお店も多くあります。
焼鶏(Roasted Chicken)【ローストチキン】
丸鶏をこんがりローストしたRoasted Chicken Rice(ローステッドチキンライス)。
ローストタイプのチキンライスは、肉をローストする広東料理の焼味(シュウメイ)の影響を大きく受けて誕生したものになります。
焼肉や叉焼も一緒に注文できる
ローストしたチキンライスを販売するお店では、各種焼味を一緒に販売していることが多く、焼肉(Siew Yoke)や叉焼(Char Siew)も注文できるケースが多いです。
ローストチキン+焼肉(Siew Yoke)。
ローストチキン+叉焼(チャーシュー)。
ローストチキン+焼肉(Siew Yoke)+叉焼(Char Siew)という組み合わせも可能です。
焼肉と叉焼は豚肉になるため、中華系の人が経営するお店で取り扱いがあるメニューで、イスラム教徒の人が利用するハラール対応したチキンライスのお店にはありません。
マレーシアでチェーン展開しているThe Chicken Rice Shopやクアラルンプールで有名なNasi Ayam Hainan Chee Mengは、いずれもハラールのお店になります。
海南鶏飯についてくるもの
- スライスしたチキン
- ご飯
- スープ
- チリソース
…これが基本セットです。
スライスされたチキンには、きゅうりのスライス、香菜(パクチー)または青ネギが添えられていることが一般的です。
チキンライスのごはん
チキンライスのご飯は、鶏皮など鶏肉の脂身、刻んだ生姜やにんにくを生米と一緒に炒め、そこに丸鶏を茹でた時のチキンストックを加えて作られています。
ご飯を炊く時に、香りづけにパンダンの葉を使って香りづけするところは、マレーシアやシンガポールの南洋らしい調理法になります。
なお、”マレーシアの国民食”として知られるNasi Lemakを作る時にも、パンダンリーフが欠かせません。
黄色いご飯の色味は何?
チキンライスのご飯の色味には、割としっかりとした黄色のものもあります。
黄色い色味は、鶏肉の色味によるものになります。
ご飯を丸めるマラッカのチキンライスボール
マラッカには、普通のチキンライスに加え、ご飯を丸めて提供するライスボール型のチキンライスがあります。
ライスボールはご飯がギュギュッと握られていて、米粒の食感を楽しむことができないことから好き嫌いが分かれるかもしれませんが、ユニークな見た目が人気です。
チキンライスのソース
チキンライスに使うソースは、大きく分けて3種類。
- チリソース
- 醤油ベースのソース
- 生姜ベースのソース
…の3つが使われます。
海南チキンライスに欠かせないチリソース。
唐辛子、にんにく、生姜、砂糖、塩、チキンストック、カラマンシーをブレンダーで混ぜ合わせて作られています。
チリソースの酸味は、カラマンシーによるものです。
カラマンシーはレモンやライムにはない酸味を持ち、カラマンシーがあれば自宅でもお店クオリティの海南鶏飯チリソースを作ることができます。
生姜ベースのソースはセットになっているケースと、ついてこないケースがあります。
ついてこないケースの方が多い印象です。
醤油、ダークソイソース、オイスターソース、ごま油、チキンストックなどで作られる醤油ベースのソースは、チキンにあらかじめかけたり、ご飯の上にかけていることもあります。
基本的に、チキンライスに使うソースには丸鶏を茹でた時のチキンストックを混ぜて、旨味を出しています。
チキンライスのスープ
チキンライスには、スープがセットになっています。
鶏肉を茹でた時のチキンストックを使ったものになりますが、うまみ調味料のMSGを混ぜただけの化学的な味しかしないお店も結構多く、スープの味を見ると細部にまでこだわっているお店とそうでないお店を見極める一つの判別材料になります。
チキンライスが美味しいお店は、鶏の自然な旨味のするスープを提供しています。
チキンライスと一緒に菜尾(Chai Boey)を販売しているお店もあります。
菜尾は、ローストダックや焼肉(Siew Yoke)などの肉に、からし菜などを鍋に入れて煮込んで作られる辛くて酸っぱいスープです。
チキンライスの定番おかずはもやし
チキンライスと一緒に食べる定番のおかず(サイドディッシュ)は、もやし。
さっと湯通ししたもやしに、醤油やごま油などをかけただけのシンプルな料理ですが、チキンライスによく合います。
美味しく食べるためのポイント【部位を選ぶ】
マレーシアのコピティアムやホーカーセンターでは、鶏肉の部位を指定して注文することができます。
選べる鶏肉の部位
鶏肉の部位を大きく分けると、
- 胸肉(Breast)
- もも肉(Thigh)
- 骨つきの下もも肉(Drumstick)
- 手羽(Wing)
…になります。
柔らかいチキンドラムスティック&もも肉
チキンライスの人気部位はドラムスティック(Drumstick)ともも肉(Thigh)。
ドラムスティックは、チキンレッグのなかでも、すね部分の骨つき肉(足関節の下の部分のもも肉)という特定の部位を指します。
また、クアラルンプールだと、もも肉のことを広東語で鶏二度と表現することが多く、
- 雞二度(Thigh)
- 雞腿(Drumstick)
…とメニューに記載されていることが多いです。
あっさりした胸肉、肉が少なめの手羽
脂身が少なめがお好みの場合は、胸肉を選ぶ形がおすすめです。
ただ、胸肉はもも肉よりもパサつきがちで、ジューシーさがないので、その点に注意してください。
手羽は肉が少なめでそれほど人気の部位ではないため、手羽がどうしても食べたい!という場合以外は、あえて注文しなくても良いと思います。
マレーシアにおける海南鶏飯の値段
場所によって異なりますが、クアラルンプールだとRM7〜RM12(210円〜360円)くらいで食べることができます。
コピティアムやホーカーセンターなどの安いところだと、RM7〜RM8程度(日本円で210円〜240円)です。
クアラルンプールだと、チャイナタウンに有名なお店(南香など)があります。
ペナンだともう少し安く、RM5〜RM6程度(日本円で150円〜180円)で食べることができるコピティアムやホーカーが多いです。
ペナンにはチキンライスが美味しいお店が多く、スティームタイプの伝統的なチキンライスであれば、以下の記事で紹介しているお店がおすすめです。
また、ペナンでは鶏肉の骨を除くようにカットしてくれるので、食べやすいお店が多い一方、クアラルンプールは骨をブツ切りにしているケースが多いです。
自宅で美味しい海南鶏飯を作ることはできる?
材料さえ揃えることができれば、自宅でも美味しい海南鶏飯を作ることができます。
ポイントは丸鶏を使うこと
ご飯やソースの旨味の元となる美味しいチキンストックを作るために丸鶏は必須の食材です。(うまみ調味料を使って味を再現することもできますが、自然な味の海南鶏飯を作りたい場合は、丸鶏が必要です。)
丸鶏はマレーシアのスーパーで普通に購入できますが、洗って綺麗にしたり、塩で皮を揉んだりなど下準備が必要なことと、鶏肉が首や顔つきのままなので、「怖い…」と感じることがあるかもしれません。
また、
- パンダンリーフ
- カラマンシー
…があると、より本場の味に近いご飯やチリソースを作ることができます。
東南アジアに住んでいれば入手しやすい食材ですが、日本では入手しにくいものであるため、そんな時はチキンライスの素を使う方法が簡単です。
まとめ:マレーシアやシンガポールで食べるべき料理
マレーシアで食べるべきご飯料理の海南鶏飯。
どこで食べても、割と美味しいものを食べることができるので、ふらっと立ち寄った場所でぜひ食べてみてください。
以上、マレーシアのチキンライスについての紹介でした!