留学や海外勤務などの海外生活の中でぶち当たる一つの壁。
それはカルチャーショック。
誰もが経験することであるものの、実際にその渦中にいると、気持ちのコントロールが難しい面があります。
私自身は海外生活が通算で10年以上、現在も海外で生活していますが、初期の頃はやはり辛いな…と思うこともありました。
この記事では、今まさに海外で気分の落ち込みに悩んでいる方に向けて、カルチャーショックとの向き合い方&乗り越え方について紹介します。
目次
カルチャーショックとは?どんな例がある?
カルチャーショックとは、異文化に接触した時に起こる反応です。
自分が慣れ親しんだ母国の慣習や文化とは異なる事象や体験を通して受ける心理的な衝撃やショックを意味します。
カルチャーショックのきっかけとなる体験例
カルチャーショックのきっかけとなる体験には色々なものがありますが、
…などを挙げることができます。
電車が時間通りに来ない…といったことでも大きなストレスになり、特に心理的なダメージが大きい差別を受けるというネガティブな体験をすると、カルチャーショックを誘発する傾向があります。
カルチャーショックによる典型的な症状
全ては「こんなはずじゃなかった…」「思うように現地の言葉が話せない」という失望感や理想と現実のギャップが根底にあるように感じています。
ただ、自分がカルチャーショックの渦中にある時は、なぜこんなにもイライラするのか、無性に悲しいのかという理由がわからないこともあります。
メンタルが不安定だな…と感じたら、それはホームシックであったりカルチャーショックの影響を受けている可能性があるので、一度立ち止まってみてください。
カルチャーショックの乗り越え方(対処&克服の方法)
色々な方法がありますが、根本的な問題を解決するために私が良いと感じている方法はただ一つ。
カルチャーショックの段階を理解して、自分の心の状態を把握すること
これに尽きます。
カルチャーショックの段階や異文化適応サイクルの考え方は、留学経験者であれば渡航前オリエンテーションで習ったことがある人も多いと思います。
私も留学前に大学で学び、この考え方が今でもとても役立っています。
カルチャーショックの段階と異文化適応プロセスとは?
カルチャーショックにはいくつかの段階(ステージ)があると言われています。
それを繰り返しつつ異文化に適応していく、これが異文化適応プロセスです。
カルチャーショックの具体的な段階とは…
こんなフェーズに分類されます。
全てが楽しい!新鮮!という段階から始まり、言葉が通じないイライラ、日本との違いから気持ちが落ち込み、そして次第に現地の生活に慣れ、順応して受け入れていく…というサイクルになります。
一番辛い時期は②のショック期です。
逆カルチャーショックというステージも
カルチャーショックの段階には、上記のサイクルの他に、母国に帰国後に経験する逆カルチャーショックもあります。
これは滞在国と母国(日本)を比較して、「滞在国の方が良かった、日本はここが変!」と批判したり、「以前の生活の方が良かった…」と落ち込んだりする症状を指します。
一年程度など比較的短い期間の海外滞在でも、逆カルチャーショックは多くの人が経験します。
逆カルチャーショックは本帰国後、時間の経過とともに落ち着いていきます。
カルチャーショックは誰もが経験するもの
どんなにポジティブな人であっても、大なり小なりのカルチャーショックを経験します。
そのため、上手く順応できないことに対して、自分を責める必要は全くありません。
自分自身に劣等感を抱く必要もなく、「あぁ、私は今カルチャーショックを受けているんだ」「カルチャーショックのサイクルのこの段階にいるんだ」と思えるだけで十分です。
ここで無理をしないことが肝心です。
落ち込む時はとことん落ち込んで、無理をする必要はありません。
ただ、訳が分からずに「気分がブルーだ」「悲しい…」という状態よりも、カルチャーショックの段階を理解して、自分がどの段階にあるのか理解できれば…
「今はそういう時期だからしょうがないよね…」
…と、自分の心の状態を客観的に見つめることができるようになります。
実際に体験してみるとわかりますが、自分のメンタルの状況をある程度客観的に見ることができると、大分気持ちが楽です。
だからこそ、
この2つを理解することがカルチャーショックを乗り越える上で重要となります。
うつ病になる前に心のケアをすることが重要
カルチャーチョックの「ショック期」から抜け出すことができず、それがうつ病に繋がっていくケースもあります。
私がまだ学生の時、留学先で知り合った友人がカルチャーショックからうつ病気味になり、毎日泣いていたり、感情的になったり、寮の部屋に閉じこもっていたりしていました。
ほかの友人と協力して、うつ病気味になっている友人に声をかけて、外に誘い出そうとしましたが、当時は対処の方法がよく分からず、最終的には自分たちもその友人の感情の起伏の影響を受けてしまい、お互いに苦しくなり困り果てた結果、留学先のカウンセラーに相談したことがあります。
その友人の場合は帰国が近づくにつれ精神的に安定し、心身の状態が良くなっていきましたが、もしうつ状態がさらに悪化していら….と思うと、もっと早く友人の変化に気づいて専門家のカウンセリングを受けるように動くべきだったと感じています。
とにかく身体を動かすことも必要
カルチャーショックのプロセスを理解することは大切であるものの、気分が落ち込んでいるからといって部屋の中に籠もっていては、負のサイクルから抜け出しにくくなります。
気分転換したい時に手取り早い方法は運動。
散歩をして外の空気を吸うだけでも違います。
ただ「外に出たくない!」「誰にも会いたくない!」という状態になっている時は、オンラインフィットネスサービスを利用したり、ネットの動画を見て部屋の中でストレッチしたり、筋トレしたり、ヨガをする形でも十分です。
汗をかくことで、何とも言えないもやもや感が多少楽になることがあります。
精神面を整えたい時に特におすすめの運動はヨガ。
現地でヨガのクラスに参加して気分転換する形も良いですが、日本語でヨガを習いたい場合はオンラインのヨガレッスンを検討してみても良いかもしれません。
オンラインフィットネスのSOELU(ソエル)は海外からも利用できる上、「ライブレッスン」を利用すると、画面上で先生と繋がりつつ、日本語でヨガのレッスンを受けることができます。
私も海外から利用していますが、自分が海外にいるということを忘れて完全にリラックスした状態でレッスンを受けることができています。
特にコロナで外出が制限され、気分が落ち込んでいた時にかなり救われました。
ライフステージで異なるカルチャーショックと乗り越え方
同じ海外生活でも、学生なのか、社会人なのか、独身なのか既婚なのかなど、ライフステージに応じてカルチャーショックの感じ方やインパクトの度合いが異なっていた…と実体験から感じています。
参考までに私がそれぞれのライフステージで体験したカルチャーショックやそれを乗り越えるために実践したコツについて紹介します。
ライフステージ①:学生(留学)
留学先の国が好きであったり憧れで留学したものの、言葉が通じない、現地の生活に馴染めないなどの理由で文化の壁にぶち当たるケースが多いと言えます。
私自身も、留学先の大学で現地の学生に混じりながら授業についていくことがかなりキツくて、「何で私、こんなにできないんだろう…」と留学初日から落ち込んでいました。
留学先でカルチャーショックに苦しんで鬱になり、最悪、帰国せざるを得ないというケースは珍しいものではありません。
学生として留学する時が一番周りのサポート体制が整っている環境下にあるので、辛い時は周りを頼ってカルチャーショック を切り抜けてみてください。
留学時のカルチャーショックを乗り越えるポイント
- 気晴らしに友達と遊んだり相談する(愚痴る)
- 留学先大学のカウンセラーなどに相談する
- 帰国日から逆算して日々の目標を設定してみる
ポイント①:気晴らしに友達と遊んだり、相談する
学生の場合、同じ留学生という立場の人が身近にいるケースが多いので、同じ境遇の友達と一緒に時間を過ごしたり相談することで、割とカルチャーショックは乗り越えやすいです。
また、留学生の友人以外に現地出身のローカルの友達ができると、世界がグッと広がり、現地の生活が違って見えてきます。
大学によっては留学生が現地の学生と交流できるプログラムがあったり、言語交換する相手を見つけやすい場所でもあるので、積極的に交流すると楽しい留学生活を送ることができます。
私も留学先で現地の学生と交流するプログラムに参加し、この時にできた現地の友人が色々な場所に連れて行ってくれたり、クリスマスや感謝祭の時に自宅に招いてくれたり、留学生同士では体験できないことをたくさん経験することができたので、世界を広げてくれた現地の友人にはとても感謝しています。
ポイント②:留学先大学のカウンセラーなどに相談する
留学先の大学にいる留学生対応専門のアドバイザーであったりカウンセラーは、カルチャーショックに陥っている学生のメンタルケアに慣れています。
困った時は自分で抱え込まずに「助けて!」と意思表示をすることが大切です。
交換留学などで日本の大学から派遣されている場合は、日本の所属大学の留学業務担当者にメールして相談すると言う方法も使えます。
この場合、留学前からお世話になっていると思うので、親身になってとことん相談に乗ってくれたり、派遣先大学の留学生担当者に相談して連携してくれたり、きっちりと対応してくれるはずです。
ポイント③:帰国日から逆算して日々の目標を設定する
留学は期間が決まっているので、帰国日から逆算して「あと◯◯日しかない!」と思うと考え方や行動が変わります。
「留学という限られた貴重な時間をどのように過ごすのか?」
このような考え方に頭を切り替えると、「落ち込んでいる暇はない!」と日々の過ごし方に対する意識が変わり、落ち込みから復活しやすいです。
また、カルチャーショックを抜け出すには語学力をあげることも効果的です。
辛い時期に黙々と勉強して身につけた力は必ず自信に繋がります。
ライフステージ②:社会人(海外勤務)
海外勤務も、その国の生活習慣や文化に慣れることに加え、働く上でのストレスやカルチャーショックがあるので、時にダブルパンチのような威力があります。
私が一番キツイな…と感じたのも独身時代に海外で働いていた時です。
留学生の頃とは比べものにならないくらいのストレスやカルチャーショックを感じていました。
海外勤務で直面するカルチャーショックを乗り越えるポイント
- 上司や同僚に相談する
- 現地で仲良くなった友達に相談する
- 自分にご褒美をあげる(ちょっとしたリッチ体験をする)
ポイント①:上司や同僚に相談する
上司や同僚との関係性にもよりますが、腹を割って話せる間柄であれば、これほど自分の状況を理解してくれる強い味方はいません。
ただ職場の人間関係に悩んでいる人も多いので、上司にも同僚にも相談できない…そんな時は以下の②の方法がおすすめです。
ポイント②:現地で仲良くなった友達に相談する
社外に友人を作って、同じ業界で働いていない人に相談することもおすすめです。
自分とは異なる業界・立場の人の苦労話を聞いたりすると、「なるほど…どこにいても大変なんだな…」と少し冷静になれます。
同僚と話すと会社や仕事のグチばかりになってしまうこともありますが、社外の友人と話すとまた違う話題がメインになり、良い気分転換になります。
ポイント③:自分にご褒美をあげる(ちょっとしたリッチ体験をする)
社会人になると経済的な余裕が生まれるので、ストレス発散を目的にちょっとリッチな体験をすることもおすすめです。
私はストレスが溜まって行き詰まった時は、良い雰囲気のホテルのラウンジに飲みに行ったり、エステに行ったりと疲れた自分にご褒美をあげるということをしていました。
今思うとかなりお金を使ったので「散財」という行為だったのかもしれませんが、気分がスッキリした上、結構楽しかったので、自分にご褒美をあげて甘やかす&労わるということもおすすめです。
「もうちょっと頑張ってみるか」という原動力になります。
海外で働く中で受けるカルチャーショックやストレスがどうにもならない時は、無理をして同じ会社で働き続けるよりも、思い切って転職して環境を変えてみるということも一案です。
ライフステージ③:結婚(パートナーの都合で海外で暮らす)
これは国際結婚をした人や海外赴任者の家族が経験するパターンですが、自分に合う国であれば普段の生活も楽しくなりますが、合わない国だと慣れるまでにメンタル的に厳しいものがあります。
あとはパートナーとの関係性(上手くいっているかいないか)も、海外生活でカルチャーショックを乗り越えることができるかどうかということに大きく影響を及ぼすと感じています。
パートナーの都合で海外で暮らす時に直面するカルチャーショックを乗り越えるポイント
- パートナーにとことん相談する
- 現地の友達に相談する
ポイント①:パートナーにとことん相談する
パートナーとの関係が上手くいっているという前提ですが、パートナーという家族の存在は非常に大きく、心の支えになります。
私の場合、結婚して夫と一緒に生活するようになってから、一人で海外で生活している時と比較して、精神的に本当に楽になりました。
心から信頼できる人がすぐ側にいて、いつでも相談できる、それがこんな絶対的安心感という大きな意味を持つとは独身時代には想像もしていなかったことです。
お互いに支え合っていくべきパートナーとは、本心を隠すことなくとことん話し合うオープンでフラットな関係性であること、これが大切だと感じています。
ポイント②:現地の友達に相談する
パートナーの存在も重要ですが、パートナー以外に腹を割って話せる友人がいると、また違った相談ができて心が楽になります。
現地で友達ができないと悩むこともあると思うので、そんな時はSNSの他、オンライン上で同じ境遇の人の体験談を読んだりすることで心が軽くなることもあります。
自分に合う国や文化がある
私の場合、アジア圏の生活の方が長いのですが、それでも欧米とアジアでの生活を比較すると、アジア圏で生活している時はほとんどカルチャーショックがなく、欧米での生活はカルチャーショックが強く出る傾向にありました。
また、自分の肌に合う国や文化…というものはやっぱりあります。
自分の好きな国で生活できることがベストですが、色々な事情によりそんなに簡単に移動できないケースが多いと思います。
ただ、同じ国でも…
- 都市部なのか郊外なのか?
- 住環境は良いか?
こんな要素を考慮して自分に適した環境に変えるだけでも、心地良さであったり生活のしやすさがグッと変わるので、できる範囲内で環境を変えることも良いと思います。
特に住環境は重要です。
カルチャーショックは永遠に繰り返す?
一度カルチャーショックの段階を経験するとそれで終わりではなく、ハネムーン期はほぼなくなるものの、ショック期→適応期→受容期を小刻みに繰り返しているように感じています。
特に嫌な体験をした時ほど、ショック期が何度も訪れます。
私自身、今でも日常生活のほんの些細なことを取り上げて「日本だったら…」と文句を言った後に、「あ…こんな風に比較しても意味ないよね…」とハッと気づく、こんなことがよくあります。
海外在住歴が20年、30年になるとまた変わってくるのかもしれませんが、小さなサイクルでのカルチャーショックというものはずっと続いていくものなのかもしれません。
まとめ
これから海外で生活を始める予定がある…という方は、カルチャーショックには段階があるという考え方と一連のサイクルを理解しておくと、現地で生活をはじめた時に何かと役に立ちます。
実際の海外生活の中で「辛いな…」と感じるようになったら、このサイクルを思い出して自分の現在の心の状態を客観視してみてください。
あと、泣きたい時はとことん泣くこと。
これだけで気分がスッキリしますが、自分で対処できないほど心が疲れてしまった時は、必ず誰かに「助けて!」と言うことを忘れないようにしてください。
どこにいてもピンチの時に手を差し伸べてくれる人は必ずいます。