マレーシアで食べるべきデザートのクエ。
クエには、プラナカンの人々に伝わるニョニャクエのほか、中華系やマレー系(インドネシア系)など様々なものがあります。
この記事ではマレーシアのクエの種類について紹介します。
マレーシア伝統菓子のクエとは?
KuihまたはKuehと表記されるクエ。
漢字では粿という文字が使われ、福建語の発音がもとになっている言葉になります。
マレー語ではKuih-Muih(クエムイ)と呼んでいます。
クエはマレーシアだけではなく、インドネシアやシンガポールをはじめとした東南アジア諸国にも類似したものがあり、それぞれ同じ名前のもの・異なる呼び名を持つものなど様々です。
マレーシアにおいて、クエは1個あたり日本円にして数十円と非常に安い価格で販売されていますが、多くの調理工程を経て作られているものが多く、手間がかかるお菓子です。
スイート系とセイボリー系がある
粿(クエ)は甘いお菓子が大半ですが、一部甘くないものや塩っぱいものも含み、
- 甘いもの=sweet(スイート)系
- 甘くないもの&塩っぱいもの=savory(セイボリー)系
…に分けることができます。
ニョニャクエについて
マレーシアで食べることができるクエには、
- ニョニャ系
- 客家系
- 潮州系
- マレー系(インドネシア系)
…など、様々なルーツを持つものが存在し、それぞれユニークな特徴を持ちます。
なかでも人気のクエはプラナカンの人々に伝わるNyonya Kuih(ニョニャクエ)です。
Kuih(クエ)に使われる定番素材
蒸して作るタイプのKuih(クエ)のベースに使われているものは、
- 米粉
- もち米
- もち粉
- タピオカ粉
- ココナッツ&ココナッツミルク
特にポイントとなる素材はココナッツ。
フレーク状のココナッツ(Grated Coconut/Shuredded Coconut)や、ココナッツミルク&ココナッツクリームはクエに欠かせない素材です。
クエ作りに使われるユニークな素材
クエ作りの定番素材でありながら、ユニークさが際立つものはパンダンとバタフライピー。
パンダンはクエの香りづけと緑色の色づけ、バタフライピーは青色の色づけに使われる主要な素材です。
ココナッツパームシュガーのGula Melaka(グラマラッカ)は強いコクのある甘味を持ち、クエによく使われる甘み成分になります。
Sago(サゴ)はサゴヤシから採れるデンプンで、一部のクエに使われている素材になります。
パンダン
マレーシアの料理とお菓子作りに欠かすことのできないパンダン。
パンダンを細かく刻んで水を加えてブレンダーにかけ、漉して抽出たものが緑色のパンダンジュース(パンダン抽出液)。
これを色づけに使います。
Butterfly Pea(バタフライピー)
青色の色づけに使われているものがバタフライピー。
インスタ映えするようなカラフルなドリンクに使われていることが多い素材ですが、マレーシアでは昔からご飯やお菓子の色づけに使われている素材です。
マレーシアで定番のKuih(クエ)の種類と特徴
紅亀粿(Ang Ku Kueh)
中華系クエの代表格、紅龜粿(アンクークエ)。
アンクークエはもっちりとした食感の柔らかい生地に緑豆の餡が美味しいお菓子です。
神様へのお供えのほか、慶事に用いられることが多いクエになります。
Kuih Talam(クエ タラム)
Kuih Talam(クエ タラム)はパンダンベースのレイヤー(緑)とココナッツミルクベースのレイヤー(白)の2層で構成されているお菓子です。
白いレイヤーの部分は単純に甘いだけではなく、ほんのりと塩気をきかせて、味のアクセントにしています。
材料がシンプルなだけに、滑らかさ、風味、塩加減と甘みのバランスをダイレクトに感じることができ、「美味しい」「美味しくない」がお店によってはっきり分かるお菓子です。
クエタラムが美味しいお店は、ほかのクエも美味しい…と個人的に感じています。
Seri Muka(スリ ムカ)/ Pulut Seri Muka
上記で紹介したKuih Talam(クエ タラム)に類似したものがSeri Muka(スリ ムカ)。
緑の部分はパンダンが使われているという共通点がありますが、違いは白い部分。
Seri Mukaの白い部分にはココナッツミルクを加えたもち米が使われています。
クエ タラムが全体的にプルプルとした食感であることに対し、Seri Mukaはどっしりとしたもち米の歯ごたえを感じることができるお菓子になっています。
もち米を意味するPulutという言葉を使い、Pulut Seri Mukaと呼ぶこともあります。
Kuih Bingka Ubi(クエ ビンカ ウビ)
キャッサバをすりおろし、それにタピオカスターチ・ココナッツミルク(ココナッツクリーム)・卵・砂糖・塩少々を加えてオーブンで焼き上げるタピオカケーキのKuih Bingka Ubi(クエ ビンカ ウビ)/ Kuih Bingka Ubi Kayu(クエ ビンカ ウビ カユ)。
クエの多くは蒸して作られることが多いものの、クエ ビンカ ウビはオーブンで焼いて作られているところがポイントです。
柔らかいモチモチ感というよりは弾力のあるモチモチ感が特徴で、クセのない優しい味のお菓子です。
クエビンカの主要材料であるキャッサバ。
キャッサバの根茎はタピオカの原料になり、タピオカ粉(タピオカフラワー)はキャッサバから作られています。
キャッサバはマレー語でUbi Kayu(ウビカユ)と呼ばれています。
Kuih Bingka Ubi(クエ ビンカ ウビ)は生のキャッサバがあれば自宅で簡単に作ることができます。
キャッサバの皮を剥いて中央の硬い芯を取り除きパパッとすりおろし、それにココナッツミルク・砂糖・塩・卵を入れてよくかき混ぜ、あとはオーブンに入れて焼くだけです。
上記画像のクエビンカは普通の白いキャッサバで作ったものですが、黄色いキャッサバ(Yellow Cassasva)を使うと、もっと鮮やかな色味が出ます。
所要時間は1時間程度で調理プロセスもシンプルです。
Ondeh-Ondeh / Onde-Onde(オンデ オンデ)
グラマラッカを包んだ生地を丸め、お湯の中で茹でたものにココナッツフレークをまぶして作られるOndeh-Ondeh(オンデ オンデ)。
生地はもち粉またはライスフラワーとタピオカ粉をミックスしたものにパンダンジュースを加えて色づけして作られています。
お湯で茹でることによって生地に包んだグラマラッカが溶け、口に入れた時にジュワッとパームシュガーが溢れ出す…これがOndeh-Ondeh(オンデ オンデ)の特徴です。
中国の湯圓(タンユエン)をベースに、パンダンやグラマラッカ、ココナッツという東南アジアのエッセンスが加えられたようなお菓子です。
Kuih Dadar(クエ ダダー)
Kuih Ketayap、Dadar Gulung、Kuih Tayapと呼ばれることもあるKuih Dadar(クエダダー)。
パンダンを使ったモチモチ食感の緑色のクレープ生地に、グラマラッカをミックスしたココナッツフレークを包み込んでいます。
Kuih Lapis(クエ ラピス)
ココナッツミルクベースのレイヤーケーキのKuih Lapis(クエ ラピス)。
Lapis(ラピス)はレイヤー(層)という意味を持ち、一層ずつ蒸して層を重ねて作りあげられています。
パンダンを使ったものは、Kuih Lapis Pandan(クエラピスパンダン)と呼ばれています。
Kek Lapis(ケックラピス)
インドネシア式のレイヤーケーキのKek Lapis。
オランダ植民地時代に、オランダのケーキのレシピを元に誕生したケーキであると言われていています。
また、マレーシアでは、インドネシアのレイヤーケーキをアレンジしたSarawak(サラワク)州のKek Lapis Sarawakが有名です。
Pulut Kaya(プルッ カヤ)/ Pulut Tai Tai(プルッ タイタイ)
バタフライピーで色づけしたもち米のケーキにココナッツジャムのカヤをつけて食べるPulut Kaya(プルッカヤ)。
Pulut Tai Tai(プルッ タイタイ)やPulut Tekanと呼ばれることもあります。
Kuih Sago Lapis(クエ サゴ ラピス)
サゴヤシから採れるデンプン質のサゴを使ったケーキがKuih Sago(クエ サゴ)。
Sagoを意味するマレー語のSaguという言葉を使って、Kuih Saguと呼ばれることもあります。
小さなパールのようなサゴパールを使って作られるKuih Sago(クエ サゴ)は、プチプチとした食感が特徴のお菓子です。
一般的なKuih Sago(クエ サゴ)は赤や緑など単色のものにココナッツフレークをまぶしたものになりますが、上記の画像にあるKuih(クエ)は上層にバタフライピー、中層にココナッツ、下層にグラマラッカが使われた3層構造になっているKuih Sago Lapis(クエ サゴ ラピス)になります。
Abuk-Abuk Sagu
Sago(サゴ)を使ったクエにはAbuk-Abuk Saguもあります。
Pulut Inti(プルッ インティ)
もち米にグラマラッカを加えたココナッツフレークをトッピングしたPulut Inti(プルッインティ)。
通常はバナナリーフに包んで販売されています。
Kuih Jagung(Puding Jagung)
とうもろこしを使ったKuih Jagung。
Jagungはマレー語でとうもろこし(コーン)を意味します。
Kuih JagungはKuih Kastard JagungやPuding Jagungと呼ばれることもあります。
とうもろこしの優しい味のする美味しいクエです。
Kuih Koci(クエ コチ)
Kuih Koci(クエ コチ)はもち粉ベースの生地に、グラマラッカをミックスしたココナッツフレークのフィリングを包み込んで蒸したものです。
こちらはKuih Koci Hitam。
黒を意味するHitamという言葉が使われているKuih Koci Hitamには、黒もち米が使われています。
ココナッツミルクを使ったKuih Koci Santan(クエコチサンタン)。
Lepat Pisang(ラパット ピサン)
バナナにココナッツを加え、バナナリーフに包んで蒸して作るLepat Pisang。
バナナの優しい味が引き立っているクエです。
Lepat Pisangに類似したものに、キャッサバ(タピオカ)を使ってバナナリーフに包んで作られるLepat Ubiもあります。
Pulut Udang(プルッ ウダン)
海老とココナッツフレークにスパイスなどで味つけしたフィリングを、ココナッツミルクで煮たもち米で巻き、それをバナナリーフに包んで焼き上げて作られるPulut Udang。
セイボリー系のクエになります。
Kuih Kosui(クエ コスイ)
タピオカ粉と米粉をベースに作られるKuih Kosui(クエコスイ)。
ブラウンカラーとグリーンカラーのKuih Kosuiがあり、ブラウンカラーはGula Melakaの色味、グリーンカラーはパンダンの色味を活かしたものになっています。
Kuih Puteri Ayu
インドネシアを起源とするマレー系のクエのPuteri Ayu。
パンダンとココナッツの香りを堪能できる優しい味のお菓子です。
Apam Kukus Coklat
ココアを使った蒸しケーキのApam Kukus Coklatも美味しいです。
年糕(ニェンガオ)/ Kuih Bakul
春節に食べるお餅の年糕(ニェンガオ)。
お正月定番のクエになります。
菜粿(Chai Kuih)
甘い系統のクエではなく、セイボリー系統のクエにあたる菜粿(Chai Kuih)。
潮州系のクエで、Jicama(ヒカマ)またはニラをフィリングとして入れた蒸し餃子です。
透き通るような生地であることから、水晶菜粿(Crystal Chai Kuih)と呼ばれることもあります。
ヒカマ入りの菜粿は中国語で沙葛菜粿(または芒光菜粿)と呼ばれています。
ニラ入りの韭菜菜粿。
水粿(Chwee kueh)/ 碗仔糕
広東省潮仙を起源とする水粿(Chwee kueh)も潮州系のクエになります。
潮州語では水粿(Chwee kueh)と呼ばれていますが、広東語では碗仔糕と呼ばれています。
米粉などをミックスして蒸したお餅のようなベースに、菜脯という切り干し大根に蝦米(干し蝦)を混ぜ合わせた餡を添えて、チリソースと一緒に食べます。
潮州飯粿(潮州飯桃)Teochew Png Kuih(Beng Kuih)
潮州系のクエとしては、潮州飯粿(潮州飯桃)Teochew Png Kuih(Beng Kuih)も有名です。
桃の形をしたクエで、ピンク色の紅桃粿、白色の白桃粿、灰色(黒色)の鼠壳粿があり、潮州の人にとって春節や清明節など重要なイベントや慶事、お供え物として欠かせないクエと言われています。
なかのフィリングは、もち米、干し海老、椎茸、豚のひき肉、ピーナッツなどが入っています。
Png Kuihも菜粿や水粿と同じように、甘くないセイボリー系のクエになります。
喜粄(HeePan)
客家(ハッカ)系のクエにあたる喜粄(HeePan)。
米漿を使って作られています。
發糕(Huat Kueh)
發糕(Huat Kueh)。
「恭喜發財!」という言葉が旧正月に定番のフレーズとして知られるように、發は縁起をかつぐ良い意味を持つ言葉で、發糕は紅龜粿と同じように、お供えものや旧正月などの慶事に用いられることが多いお菓子になります。
馬來糕(馬拉糕)
蒸しケーキの馬來糕(馬拉糕)。
点心のお店で提供されていることも多く、飲茶に定番のケーキです。
白糖糕
広東省や香港&マカオなどで親しまれている伝統的な中華菓子の白糖糕は、マレーシアでも食べることができます。
別名で倫教糕と呼ばれることもある白糖糕は、白砂糖を使ったお米(米粉)ベースの蒸しケーキになります。
Kuih Akok
マレーシア東海岸のクランタンやトレンガヌで有名なKuih Akok。
ココナッツミルクベースのパンケーキになります。
Kuih Tepung Pelita
米粉を使ったクエのKuih Tepung Pelita。
イスラム教徒の人が断食をするRamadan(ラマダン)の時期に見かけることが多くなるTepung Pelitaはココナッツミルクを使う白い層とパンダンを使う緑色の2層で構成されている、非常に柔らかいプルプル食感が特徴のクエです。
kuih tepung pelitaと非常によく似ているクエにKuih Takoというものがありますが、見た目は似ているものの別のお菓子になります。
Kuih Lopes
餅米を使い、バナナの葉に包んで蒸すまたは茹でて作られる、粽のようなKuih Lopes。
ココナッツフレークをまぶし、さらにグラマラッカシロップをかけて食べるクエになります。
Kuih(クエ)はマレーシアのどこで食べることができる?
市場や屋台街のホーカーセンターの一角で販売していたり、専門店があったり、色々なところで購入することができますが、いくつかおすすめのスポットを紹介します。
旅行者の方がアクセスしやすい場所にあるお店も紹介していますが、私自身が特に美味しいと感じているお店はMoh Teng Pheow Nyonya Koayと莉儿( Li Er)。
どちらもペナン島にあるお店です。
Moh Teng Pheow Nyonya Koay
ペナンで一族三世代、80年以上の歴史を持つMoh Teng Pheow Nyonya Koay。
昔ながらの伝統の味を守っている、老舗として有名なお店です。
莉儿
同じくペナンにある莉儿( Li Er)というニョニャクエ専門店も非常におすすめです。
その見た目や味から、非常に丁寧な仕事ぶりをしていることが伝わる、そんなKuih(クエ)を作っています。
Nyonya Colors
クアラルンプールを訪れる旅行者の方が一番使いやすいお店はNyonya Colors(ニョニャカラーズ)。
スリアKLCCやパビリオンKL、ミッドバレーのThe Gardens、Nu Sentralなど、主要ショッピングモールに入店しています。
ペナンの有名店のクエほどのクオリティの高さはないものの、気軽にクエを楽しむことができるスポットとして便利です。
Nyonya Heritage
クアラルンプールのブリックフィールズでクエを販売しているNyonya Heritage。
お持ち帰り専用ですが、KLセントラル駅から徒歩ですぐの場所にあるので、旅行者の方もアクセスしやすい場所にあります。
ニョニャカラーズのクエに使われているパンダンの緑の色合いと比較して、Nyonya Heritageのクエはより自然な色味でホームメイド感があるところが良いな…と感じている部分です。
Nyonya Heritageで購入すべき一番のおすすめは芋头糕(タロイモケーキ)。
ほかにもパンプキンケーキ(南瓜糕)、ビーフン&ミー炒め(炒米粉面)などがあり、Savoury系統のメニューは美味しいものが多いです。
また、Nyonya HeritageはBubur Chacha(ボボチャチャ)もおすすめです。
ICC Pudu
クアラルンプールを訪れる旅行者の方でPuduエリアに足を運ぶ予定がある…という方は食事がてらICC Puduにあるお店をのぞいてみても良いかもしれません。
各種Kuih(クエ)の販売をしているお店がICC Puduの中に数店舗あります。
まとめ:優しい味わいのマレーシアのKuih(クエ)
優しい味わいが特徴のマレーシアのクエ。
クエ自体には本記事紹介していないものも含め、まだまだ色々なものありますが、
- Ang Ku Kuih
- Kuih Talam
- Kuih Bingka Ubi
- Pulut Tai Tai
- Ondeh-Ondeh
…は定番のクエとしておすすめです。