古い倉庫街に芸術の息吹を吹き込み、アートセンターとして再生した高雄の駁二芸術特区。
クリエイターたちの芸術魂溢れるアートに加え、飲食店やお買い物スポットがある複合センターであることから、様々な楽しみ方ができる場所です。
台湾高雄の駁二芸術特区(ピア2アートセンター)とは?
正式名称は駁二藝術特區。
台湾最大の港湾である高雄港に隣接した場所にあり、元々は倉庫街だった場所になります。
駁二芸術特区(駁二アート特区)には、上記のような倉庫がたくさんあり、展示スペースとして活用されています。
古い倉庫街からの再生
倉庫街として使われるようになったのは、今から約四半世紀前の1973年。
古い倉庫街が再び注目を集めるようになったきっかけは、2000年の国慶節を祝うための花火打ち上げ候補地を政府が探していた時。
2001年、台湾の芸術家たちが「駁二藝術發展協會」を立ち上げ、古い倉庫街をアートスペースに変革するプロジェクトが動き出します。
2002年に倉庫群のリノベーションが完了、アートセンターとしてのスタートを切ります。
2006年以降は経営主導が高雄政府文化局のもとに渡り、エキシビションなど様々なイベントが行われる台湾南部のアート発信地として発展を遂げます。
古びて埋もれかけていた場所に、高い志を持つアーティストと政府が手を組みアートの息吹を吹き込んで再生した、そんな場所が駁二芸術特区になります。
駁二芸術特区の由来
駁二は高雄港第三船渠(高雄港第3ドック)にある第二號接駁碼頭(第二埠頭)が語源になっている言葉です。
実際に駁二芸術特区(駁二アート特区)からは高雄港を見渡すことができます。
駁二芸術特区の読み方
「駁二」という文字を見ると、「何て読むの?」と疑問に持つ方が多いはずです。
中国語で駁二芸術特区はbóèr yìshù tèqū。現地の人は略して駁二(ボーアー)と呼んでいます。
日本語では駁二芸術特区や駁二アート特区と表記され、「ばくに芸術特区」になります。
ちなみに、英語ではThe Pier-2 Art Centerと表記されます。
駁二芸術特区の地図とエリア別の見所
駁二芸術特区(駁二アート特区)は大きく分けて3つのエリアで構成されています。
- 大勇區(大勇倉庫群)
- 蓬萊區(蓬莱倉庫群)
- 大義區(大義倉庫群)
それぞれのエリアには大勇路、蓬萊路、大義街という通りがあり、ストリート名が各エリアの由来になっています。
大勇倉庫群
大勇倉庫群には様々なオブジェや展示場があるほか、お買い物スポットの誠品生活があります。
誠品生活。
お土産にできるアイテムが揃っています。
大勇倉庫群にあるパブリックアート
大勇倉庫群にあるパブリックアートの中でも一際目を引く「車站 / 3D Train Station」。
横27メートル、高さ12メートルの建物(港湾局の独身宿舎)の壁に描かれた大型パブリックアートです。
台鐵(台湾鉄道)の車両が透視図法を用いて描かれた3Dアートになっています。
建物の側面にはトランスフォーマーがデザインモチーフになった「鋼鐵工人」の壁画もあります。
よく見てみると、トランスフォーマーの側に複数の人の姿が描かれています。
中国語でトランスフォーマーは鋼鐵人 、「工人」は労働者という意味があり、トランスフォーマー(鋼鐵人)とそのメンテナンスをしている職人さん(工人)たちの姿が描かれている壁画は“アートと言葉遊び”を掛け合わせたパブリックアートです。
ちなみに、駁二芸術特区(The Pier-2 Art Center)内にはトランスフォーマーのレプリカもあります。
こちらのオブジェも人気撮影スポットです。
月光劇場(ムーンライトシアター)の上に座っているかわいい二人。
帽子をかぶっている子の名前は圈圈寶、ブルーの服を着ている子の名前は太空寶。
作品タイトル一起坐著,甚麼也不做 / Sit here, do nothingの通り、二人ともリラックスした表情で、”ただ座って何もしない時間”を楽しんでいます。
駁二芸術特区(駁二アート特区)を訪れる人々にも同じようにゆるやかな時間を楽しんで欲しいという思いが込められています。
コンテナを巨大な積木に見立てたアート作品の巨人的積木。
10mの高さがある大きなパブリックアートは迫力満点です。
正義の象徴である関羽とそれに対峙する赤色の獣。
獣の体の”一部”には毛沢東の顔が描かれていて、それは権力の象徴を意味します。
関羽の手にある棒状のものは刀ではなくモップ。
“悪”を武力(刀)で成敗できた昔と現在の対比としてモップが使われていて、このアートが意味するメッセージとしては、権力を前にして時に正義は無力であるという現代社会を揶揄した風刺の意味合いを持つものになります。
蓬萊倉庫群
MRT西子灣駅側にある蓬莱倉庫群。
大勇倉庫群と蓬莱倉庫群の間には道路を挟んで2つの巨大なオブジェがあります。
B7とB8の倉庫にある列車展示場の哈瑪星台湾鉄道館(はません台湾鉄道館)。
台湾の鉄道の歴史について学ぶことができる場所になっています。
哈瑪星駁二線(ハマセン駁二線)というものもあり、こちらは実際にミニ列車に乗車する体験ができます。
小さな子供だけではなく、大人たちがキャッキャッと童心にかえっている姿を見ているだけで和みます。
料金などの詳細情報は哈馬星台湾鉄道館の公式サイトで確認できます。
哈瑪星(はません)という言葉の語源は、日本による統治時代の名残で日本語の「濱線」がもとになっているのですが、そんな歴史的背景についても公式サイトで丁寧に説明されているので、興味がある方はチェックしてみてください。
哈瑪星鉄道文化園区
鉄道館の奥には哈瑪星鉄道文化園区と呼ばれる屋外の展示スペースがあります。
MRT西子灣駅にほど近い場所にあるエリアになります。
こちらはCK58の蒸気機関車。
巨大ラッパ。
その大きさは4m以上にも及びます。
スチールで作られた大きなスーツケース。
スーツケースは旅立ちに対する幸福感、未来への希望や期待の象徴である一方、鉄のスーツケースが意味することは旅や人生の”重み”。
スーツケースの上にとまっている鳥たちは故郷を思う寂しさを表現しています。
このアートが伝えたいことは、寂しくなったら“家に帰ろう”。
大義倉庫群
大義倉庫群には飲食店やショップが多いエリアになっています。
サニーヒルズは大義倉庫群にあります。
このエリアにもフォトジェニックなスポットが満載です。
紙漿(Paper Pulp)を使って作られた虹のアート。
『遇見彩虹 / Encountering a Rainbow』という作品名の通り、大義倉庫群をのんびり歩いていていて何気なく虹を見つけて思わずハッとする、そんなさりげない魅力があります。
虹の前には黒い犬がいます。
虹と犬、こんな風に少し遠くから2つのアートを眺める形もおすすめです。
倉庫街の壁にある蛇口を活用しモザイクを使って仕上げたアート作品の小安。
実際に一定の時間をおいて、蛇口から水が吹き出すようなつくりになっていて、目で楽しむことができるアートです。
ベルギーのブリュッセルにあるManneken Pis(小便小僧)のジュリアンをモチーフにしたもので、台湾版の愛称にして小安(シャオアン)と名づけられています。
かつて魚粉や砂糖の倉庫として使われていた駁二芸術特区(駁二アート特区)で最も恐れられていたことは、乾燥による火災の発生。
そんな歴史的背景から倉庫エリアの壁にはたくさんの蛇口があります。
小安の製作者である黃敬中さんが大義倉庫群を歩いている時に蛇口の多さに気づき、そこからインスピレーションを得て作られた作品になります。
大義倉庫群にあるブランコ。
道のど真ん中にぶら下がっているブランコを見ると、思わずブランコで遊びたくなってしまう衝動に駆られます。
Wooderful Life
台湾の知音文創(Jean Cultural & Creative)が手がけるWooderful Life。
オルゴールをはじめとした木のおもちゃを販売するブランドで、自分の好きなパーツを選んでオルゴールのDIYもできます。
木のおもちゃ。
温もりを感じることができる、かわいいおもちゃが揃っています。
森育森林(The Wooderful Land)はWooderful Lifeの子ブランドで、木製のゲームを通じ、森林や木に対する知識を深める教育の場として作られたものになります。
知音文創が手がけるものは全てクリエイティブで、感嘆せずにはいられない魅力があります。
Wooderful Lifeは木のおもちゃを販売するラインになりますが、知音文創(Jean Cultural & Creative)が手がける付箋やマスキングテープなどの文房具商品もとてもかわいいので、台湾でお土産に購入する形もおすすめです。
サニーヒルズ高雄駁二特区店
大義倉庫群エリアにサニーヒルズのお店があります。
サニーヒルズの店舗は台北や南投にもありますが、駁二芸術特区の店舗には独特の開放感があります。
サニーヒルズのお店では、試食用のパイナップルケーキをお茶と共に提供してくれます。
ピア2アートセンターのロケーションと行き方
住所:高雄市鹽埕區大勇路1號
バス利用も可能ですが、便利なMRTやLRT利用がおすすめです。
公共交通機関情報
MRTであれば、
- 鹽埕埔駅(オレンジライン)【1番出口】
- 西子灣駅(オレンジライン)【2番出口】
LRTであれば、
- 駁二蓬萊駅(C13駅)
- 駁二大義駅(C12駅)
大勇倉庫群に直行したい時はLRTの駁二大義駅(C12駅)の利用が便利です。
アートセンターの敷地内にあるLRTの駁二蓬莱駅。
LRTはこんな風にアートセンター内を走っています。
電車を間近で見ることができます。
まとめ:高雄観光で訪れるべきアートセンター
ちょっとしたところに遊び心やアート魂が溢れ、台湾のアーティストたちの粋な心意気を感じることができる駁二芸術特区。
非常にフォトジェニックな観光スポットであることから、写真が好きという方に特におすすめです。
また、駁二芸術特区のすぐ近くには、大港橋や大港倉などの新しいスポットもオープンしているので、一緒に足を運んでみてください。