マレーシアやシンガポールにあるコーヒーショップのKopitiam(コピティアム)。
ローカルコーヒーのKopi(コピ)をはじめとする各種ドリンクのほか、食事を楽しむことができる場所です。
この記事ではマレーシアのKopitiamの概要とグルメについて紹介します。
マレーシアやシンガポールにあるKopitiamとは?
Kopitiam(コピティアム)は、
- コーヒーを意味するKopi(コピ)
- 店を意味するTiam(ティアム)
…という2つの単語で構成されている言葉です。
Kopi(コピ)はマレーシアでコーヒーを意味する言葉として使われているもので、Tiam(ティアム)という言葉は福建語(閩南語)がベースになっています。
インドネシアでも、コーヒーはインドネシア語でKopi(コピ)と呼ばれています。インドネシアのコーヒーの歴史は、オランダ(オランダ東インド会社)が深く関わっていて、インドネシアでKopiと呼ばれるようになった背景には、オランダ語でコーヒーを意味するKoffieに由来していると考えられています。
コピティアムは一般的なカフェとは異なる
Kopitiamを英訳すると、Coffee Shop(コーヒーショップ)。
コピティアムのなかには、お店の英語表記に「Cafe」という言葉を使っているケースもありますが、コピティアムで提供されるコーヒーはマレーシア伝統のもので、ラテやカプチーノなどを提供するようなカフェのコーヒーとは異なるものになります。
カジュアルな食事スポット
伝統的なKopitiam(コピティアム)は、非常にカジュアルな雰囲気で、気軽にドリンクや食事を楽しむことができます。
憩いの場&社交の場としてのコピティアム
近年、リノベ系のおしゃれなコピティアムも増えてきていますが、昔ながらのKopitiam(コピティアム)は、単に食事をする場所だけではなく、そのエリアに住む常連のお客さんたちがおしゃべりを楽しむ社交の場という側面もあります。
お年寄りが多い古いエリアなどに行くと、和気あいあいと会話しているローカルの人の姿を割とよく見かけます。
コピティアムはマラヤに渡ってきた海南の人々がはじめた飲食店
コピティアムが生まれたのは、英国がマラヤを統治していたイギリス領マラヤ(British Malaya/ブリティッシュ・マラヤ)の時代。
1800年代後半の19世紀から20世紀にかけて中国の海南島からマレー半島に渡ってきた海南の人々が築き上げたものとして知られています。
海南の人々はマラヤにおいて、
- ホテルやレストランで働く
- 英国役人のシェフとして仕える、英国軍基地にあるお店で働く
- 西洋人やプラナカンなど富裕層の料理人として仕える
…など、主にサービス業や飲食業に従事する人が多かったと言われています。
海南の人々が料理に長けていたというよりは、ほかの職業は広東系の人が福建系の人が独占し、料理人という職業が空いていたためという説があります。
マレーシアやシンガポールにおける老舗コピティアムの創業者のルーツを辿っていくと、海南出身ということがほとんどで、例えばシンガポールのコピティアムチェーンとして有名なYa Kun Kaya Toast(ヤクンカヤトースト)やKilliney Kopitiamの創業者も、海南にルーツを持っています。
コピティアム自体は戦前からあったものの、第二次世界大戦後になると、戦争による景気の悪化を受けて、英国人や富裕層の料理人としての仕事を失う人が増えたり、キッチンハンドとして働いていた人が独立して自らお店をかまえるようになり、これによりKopitiam(コピティアム)が増え、コピティアム文化が現地に根づくようになりました。
海南の人々がマラヤで生み出した名物料理
福建(Hokkien)、広東(Cantonese)、客家(Hakka)、潮州(Teochew)、そして海南(Hainan)など、様々なエスニックグループが存在するマレーシアの華人コミュニティ。
飲食業に従事する人が多かった海南の人々は、マレーシアの中華系エスニックグループとしては小規模であるものの、マレーシアを代表する様々なグルメを生み出しています。
例えば…
- 海南コーヒー/ホワイトコーヒー
- カヤトースト
- 海南チキンライス
- 海南チキンチョップ
…が特に有名です。
- 英国人が飲んでいたブラックコーヒーが苦く口に合わず、コンデンスミルクを入れてローカルの味に合うように作りあげたホワイトコーヒー
- 西洋のレシピをベースに、ローカルの食材で作りあげたKaya(カヤ)や海南チキンチョップ
…など、海南の人々が現地で手に入る食材を用い、創意工夫して作り上げた料理が、今あるマレーシアの名物料理になります。
中華系の人が経営するコピティアム
海南からマラヤに渡ってきた人々がはじめたKopitiam(コピティアム)は、その歴史的背景から、マレーシアでは今でも中華系の人がオーナーとして切り盛りしているビジネスになります。
また、一般的なコピティアムで取り扱っている料理は豚肉を扱っていたり、ノンハラールであることから、普通のコピティアムでイスラム教徒のお客さんを見かけることはありません。
ただし、中華系の人がオーナーのコピティアムであっても、ハラールの料理を扱っているコピティアムもあり、クアラルンプールではCapital Cafeがハラールのコピティアムとして有名です。
Capital Cafeの客層はイスラム教徒の人が大多数を占めます。
ペナンだと镁华茶室(Bee Hwa Cafe)がハラールのコピティアムとして有名で、ラードを使っていない炒粿條が提供されています。
ハラールのコピティアムレストランチェーン
マレーシアでフランチャイズ展開するような大手企業が経営するコピティアムレストランになると、ハラール認証を取得しているケースが多いと言えます。
例えば、マレーシア最大のコピティアムレストランチェーンのオールドタウンホワイトコーヒー。
イスラム教徒を含む様々なお客さんがオールドタウンを利用しています。
マレーシアのコピティアムで定番の朝食グルメ
マレーシアのKopitiam(コピティアム)で定番の朝食グルメは、
- Kopi(コピ)
- カヤトースト
- ハーフボイルドエッグ(半熟卵)
…この3つです。
コピ
Kopitiam(コピティアム)で定番のドリンクはKopi(コピ)。
コピティアムで提供されるコーヒーは、独自の焙煎方法と抽出方法により作られているマレーシアの伝統コーヒーになります。
上記画像はKopitiam(コピティアム)で定番のカップ&ソーサー。
ホットのKopi(コピ)やTeh(テー)を注文すると、この定番のカップ&ソーサを目にすることが多いと思います。
全てのコピティアムにあるというわけではありませんが、羅漢果(ルオハングオ)やBarley(バーリー)などのハーバルティー系のドリンクもKopitiam(コピティアム)で飲むことができます。
カヤトースト
カヤトーストも定番です。
炭火の上に網を置き、パンにほど良い焦げ目をつけてサクサクに仕上げる形が、コピティアムにおける伝統的なカヤトーストの製法です。
現在はトースターを使うお店が多いものの、マレーシアの一部のコピティアムでは現在も炭火を使ってパンを焼いています。
ハーフボイルドエッグ
カヤトーストと一緒に注文する定番のメニューは、温泉卵(半熟卵)のハーフボイルドエッグ(Half Boiled Egg)。
カヤトーストと一緒に食べると美味しいです。
コピティアムではどんな料理を食べることができる?
Kopitiam(コピティアム)によって、食べることができるグルメは異なるものの、
…などが定番料理になります。
また、マレーシアの国民食&朝食の定番のNasi Lemakを販売しているお店もコピティアムに多いと言えます。
Nasi Lemakに関しては、コピティアムのなかにNasi Lemakのお店があるケースと、Nasi Lemak Bungkusとして、バナナの葉やオイルペーパーで包んだ状態でテーブルの上に置かれていたり、レジ近くで販売しているケースがあります。
地域によって異なるグルメ
地域による定番グルメの違いもあります。
例えば、マレーシアを代表するグルメの都市と知られるペナン。
ペナンのコピティアムでは、ペナン名物のペナンホッケンミー(蝦麺)、炒粿條、アッサムラクサ、粿條湯などが定番であることに対し、クアラルンプールではこれらのグルメを提供しているコピティアムはかなり少なめです。
福建系の人が多いペナンに対し、広東系や客家系の人が多いクアラルンプールでは、豬肉粉や板麺、醸豆腐などのお店を見かけることの方が断然多いです。(板麺や醸豆腐は客家の料理になります)
同じマレーシアにあるコピティアムでも、このような地域差があります。
伝統コーヒーショップにおける注文方法
Kopitiam(コピティアム)における一般的な注文方法は、
- テーブルを確保(空いている席に座る)
- ドリンクを注文(ドリンク担当の人がテーブルまで来てくれる)
- 食べたいものがあるお店に行き料理を注文する(座っている場所を伝える)
- ドリンクや料理がテーブルに届けられた時に支払いをする
….こんな流れで、注文から支払いまでを完了させます。
ドリンクの注文について
ドリンクについては、座席に着くとコピティアムの人が注文を取りに来てくれるので、口頭で注文します。
Kopi(コピ)、Teh(テー)、Cham(チャム)のほか、各種アレンジ用語など、コピティアムで定番のドリンクの名前を覚えておくと便利です。
料理の注文について
料理を注文すると、どのテーブルに座っているか聞かれます。
「あの辺に座っている」と言ったり、座席にテーブル番号がある場合は、自分が座っている番号をお店に人に伝えます。
また、料理の注文をする時に、お店の人に持ち帰りか店内飲食かを聞かれることが多いです。
持ち帰りをする時は、英語でTake Awayと言ったり、中国語であれば「打包」という表現を使います。
打包のピンインはDǎbāo(ダーパオ)になりますが、マレーシアの中華系の人が話している中国語の音だとダーパオよりもターパオに近い音になります。
支払いについて
伝統コピティアムにおける支払い方法は、コピティアムのオーナーがどんな営業形態をしているのかにより異なりますが、よくあるケースとしては、
- ドリンクを運んでくれた人
- 料理を運んでくれた人
…それぞれに支払いするケースが多いです。
これは、コピティアムのオーナーがドリンクのお店を経営し、各料理のお店はテナントとしてコピティアム内で営業しているケースで、ドリンク関連の管轄元と各料理店の管轄元が異なる時は、それぞれのお店に支払いをします。
カヤトーストはドリンクを提供するコピティアムオーナーの管轄になっていることが多く、ドリンクを注文する時に一緒にオーダーできる形が多いです。(支払いもドリンクとカヤトーストが届いた時にします。)
オーナーが一括管理している場合の注文方法
一方、コピティアムオーナーがドリンクも料理も全て管轄している場合は、全部一緒に注文して支払いできます。
例えば、クアラルンプールで90年以上の歴史を持つYut Kee Restaurant。
Yut Keeでは、座席に案内されると、店員さんがテーブルに来て注文を聞いてくれ、ドリンクも料理も一緒に注文することができます。
会計は食後で、オーナーがいるカウンターで行います。
支払い形態はお店に入ってみないと分からないので、支払いを求められた時に対応する…という形で、あまり難しく考えなくても大丈夫です。
新トレンド!おしゃれなコーヒーショップが増えてきている
昔ながらのコピティアムがある一方、マレーシアにおける近年のトレンドであるリバイバルブームとして、カフェに近いおしゃれなコピティアムが増えてきています。
クアラルンプールでは、コピティアムのコンセプトやレトロなインテリアをベースにしたお店がショッピングモール内に増えてきているほか、老舗コピティアムがおしゃれに生まれ変わって進化を遂げているケースもあります。
老舗が生まれ変わった成功例として挙げることができるのは、クアラルンプールのチャイナタウンにある何九海南茶店(Ho Kow Hainam Kopitiam)。
65年以上の歴史を持つ何九海南茶店は、2018年に移転してリニューアルオープンして以来、物凄い行列ができる大人気コピティアムに変化しています。
この背景には、鬼仔巷のストリートアートというチャイナタウンの再開発プロジェクトも関わっていますが、何九海南茶店の周辺にあるお店も独特のレトロ感や南洋風の雰囲気、コロニアル感をコンセプトにしているケースが多く、一つのトレンドになっています。
ちなみに、何九海南茶店の隣にあるMalaya Gardenは、写真映えする店内が人気になっているスポットで、KopiやNasi Lemak、カヤトーストなどコピティアムベースのメニューに独自のアレンジを加えたり、フュージョンメニューが豊富なユニークな食事スポットになっています。
クアラルンプールのチャイナタウンでいうと、Luckin Kopiもコピティアムベースのレストランカフェになります。
100年以上前に建てられた古い建物を活用しています。
2022年に注目を集めているコピティアムはOriental Kopi。
エッグタルトや菠蘿包(Polo Bun)が人気のコピティアムになります。
また、クアラルンプールのショッピングモールのなかに入っているNyonya ColorsやBungkus Kaw Kawもコピティアムのコンセプトが元になっているお店で、どちらも安くて使いやすいです。
ショッピングモールに入っているコピティアム系統のお店や、カフェに近いコピティアム風のおしゃれなお店では、伝統コピティアムよりも注文方法が簡単なケースが多いです。
- テーブル席にある紙の注文票にメニュー番号を記載してお店の人に渡すケース
- レジカウンターで注文するケース
- 店員さんが各テーブルに注文を聞きに来てくれるケース
…などがあります。
ホーカーセンターやフードコートとの違い
Kopitiam(コピティアム)と共に、マレーシアとシンガポールでよく聞く言葉としてHawker Centre(ホーカーセンター)があります。
ホーカーセンターは、オープンエアーのスペースに様々な料理を提供するお店を集めた屋台街の広場を指します。
ホーカーセンターにおける注文方法はコピティアムと似ていて、席に座るとドリンクの注文を聞きに来てくれる人がいて、あとは好きな屋台に行き料理を注文、お店の人がテーブル席まで料理を運んでくれる形になっています。
大型のホーカーセンターでは、テーブル席に番号がふられていることが多く、料理を注文する際にお店の人にテーブル番号を伝えます。
フードコート
Food Court(フードコート)も、色々な飲食店が集まっているという意味においては、ホーカーセンターに近いものがありますが、一番の大きな違いは屋内(インドア)にあるという点です。
大抵はショッピングモール内など、エアコンが効いた場所にあり、ホーカーセンターよりも清潔感があります。
また、フードコートは基本的にセルフサービスになっていて、ドリンクも料理も各自お店に行って注文&支払いをして、自分で座席まで運ぶ形になっていることが多いです。(日本のショッピングセンターにあるフードコートでの注文方法と同じイメージです。)
クアラルンプールのPavilion KLにある大型のフードコートは、旅行者にも使いやすいスポットになっています。
まとめ
伝統的なKopitiam(コピティアム)のなかには、旅行者の人には使いにくいと感じてしまう雰囲気があるところもあるので、そんな時は上記で紹介したショッピングモールに入っているお店やおしゃれなコピティアムが使いやすいと思います。
以上、マレーシアのKopitiam(コピティアム)についての紹介でした!