マレーシアのペナンを発祥とする伝統料理のNasi Kandar。
この記事ではNasi Kandarの由来をはじめ、概要と歴史、注文時のポイントについて紹介します。
マレーシアのペナン発祥のNasi Kandarとは?
Mamak(ママッ)と呼ばれるマレーシアのインド系イスラム教徒の人々によってもたらされたNasi Kandar。
南インドからマラヤ(現在のマレーシア)に渡ってきたイスラム教徒が販売するようになった料理です。
白いご飯に、鶏肉や魚料理、おかずなどを盛って、たっぷりのカレーソースをかけて食べる料理になります。
Nasi Kandarの発音はナシカンダーそれともナシカンダール?
Nasi Kandarは日本語でナシカンダールと表記されることがあるものの、ローカルの人はナシカンダールよりもナシカンダーと発音しています。
発祥地はペナン
Nasi Kandarの発祥地はペナン。
ペナンには非常に多くのNasi Kandarのお店があることで知られています。
そのなかでもマレーシアで最も古いと言われているお店がCampbell Street(Lebuh Campbell)にあるHameediyah Restaurant。
創業1907年、115年以上という長い歴史を持ちます。
創業当時はCampbell Streetで路上販売していたHameediyah Restaurantですが、店舗をペナン以外にも広げ、現在はクアラルンプールにもいくつか支店があります。
24時間営業を象徴するお店
マレーシアにおいて、Nasi Kandarは24時間営業を象徴するお店でもあります。
マレーシアで夜遅くに食事がしたい時に現地の人が思いつくグルメスポットはMamakのお店、つまりNasi Kandar(ナシカンダー/ナシカンダール)。
パンデミック以降は営業時間に制限がかかったことがあったり、従業員の人手不足などの問題から、以前よりも営業時間が短くなったお店もありますが、基本的には24時間営業しているお店がナシカンダーになります。
ナシカンダーの歴史と由来(意味)
元々はCooliesと呼ばれる移民労働者向けの料理であったNasi Kandar。
その歴史はイギリスがペナンを海峡植民地として統治していた18世紀頃にまで遡ります。
当時、マレーシアの交易の場として栄えていた場所がペナンのWeld Quey(ウェルドキー)で、Weld Quayには多くの移民労働者や商人が出入りしていました。
港で働く人々の仕事は過酷で、労働時間も長かったことから、安価で素早く食べることができるご飯が求められるようになり、そんな需要に応える形で販売するようになったものがNasi Kandar(ナシカンダー/ナシカンダール)です。
このようにしてNasi Kandarはペナンで生まれました。
Nasi Kandarの意味
Nasi(ナシ)はマレー語でご飯を意味します。
Kandar(カンダー)は肩に乗せて物を運ぶための棒という説があるほか、Urdu(ウルドゥー)語で肩を意味するKandar(Kandha)に由来しているという説があります。
Kandarは棒を意味するのか、それとも肩を意味するのか、やや不明なところがありますが、木(竹)の棒の両端にご飯とカレー、そのほかのおかずを入れた籠を吊るし、天秤状にして肩に乗せて運んで販売するスタイルをNasi Kandarと呼ぶようになり、これがナシカンダー(ナシカンダール)の由来になります。
現在はレストランスタイルに変化
当初は竹の棒を肩にのせて路上販売していたナシカンダーですが、1970年頃からレストラン形式に変化します。
そのため、現在では肩に担いで販売する伝統スタイルを目にすることはなく、店内で飲食する形になっています。
ペナンにあるNasi Kandarのワイヤーアート
Nasi Kandar発祥の地であるペナンには、世界遺産エリアにNasi Kandarのワイヤーアートがあります。
このように、おかずやご飯を入れた籠を棒に吊るし肩に乗せて料理を運び、路上で売りさばいていました。
ワイヤーアートには、木の棒をしならせている人々も描かれています。
ペナンのジョージタウンにあるワイヤーアートは、ペナンの歴史のほか、文化や言葉の意味を学ぶことができる非常に意義のあるものになっています。
1つ1つのワイヤーアートはどれも興味深いものばかりなので、ぜひチェックしてみてください。
Nasi Kandarで定番のメニュー
様々な料理から好きなものを選ぶことができるNasi Kandar(ナシカンダー/ナシカンダール)。
チキンカレーやフィッシュカレーなど、各種カレー料理が揃っているほか、揚げ物や野菜など色々なおかずがあります。
Nasi Kandarはイスラム教徒であるMamak(ママッ)が経営するお店であるため、豚肉の取り扱いはなく、鶏肉、牛肉、羊肉(ラムやマトン)、魚、シーフードが主要なおかずになります。
揚げ物の定番人気はフライドチキンのAyam Goreng(アヤム ゴレン)。
鶏肉料理では、カリーチキン(チキンカレー)のほか、玉ねぎを使ったAyam Bawang(アヤムバワン)や蜂蜜で味つけしたAyam Madu(アヤムマドゥ)などもよくあります。
魚の唐揚げのIkan Goreng(イカン ゴレン)。
日本人の口によく合うおかずとしておすすめです。
魚料理にはTenggiri(テンギリ)と呼ばれる魚を使っていることが多いです。
上記画像はIkan Tenggiriを使ったフィッシュカレー。
野菜のおかずは、オクラ、キャベツ、苦瓜(ゴーヤ)、もやし、きゅうりなどがあります。
ターメリックやマスタードシード、カレーリーフなどを使ったキャベツ炒めのKobis Goreng(コビス ゴレン)はNasi Kandarで定番の野菜のおかずの1つです。
キャベツはKobisのほか、Kubisという綴が使われていることもあります
野菜のおかずではオクラも定番です。
迷った時はチキンカレー、フィッシュカレー、揚げ物(フライドチキンやフライドフィッシュ)などを選ぶとハズレが少ないです。
また、ナシカンダーに添えるおかずとしては、アヒルの塩漬け卵(マレー語でTelur Masin)も定番人気で、ナシカンダーによく合います。
ナシカンダーで覚えておくと便利な言葉
Nasi Kandarで使う定番のフレーズがいくつかあります。
Nasi Kandarは指差しで注文できるため、あまり細かいことは気にしなくても大丈夫なのですが、マレー語のメニューしかなかったり、マレー語しか通じないお店もあるので、以下に覚えておくと便利な言葉について簡単に紹介します。
店内飲食と持ち帰りに関する言葉
ナシカンダーでは、はじめに店内で飲食するか持ち帰りをするか聞かれることが定番です。
この時に使う言葉は、
- Makan(マカン)
- Bungkus(ブンクス)
Makanは食べるという意味を持つマレー語で、店内飲食する時にも使う言葉になります。
包むという意味を持つBungkus(ブンクス)は、持ち帰り(テイクアウト)する時に使います。
ナシカンダーを注文する時に、はじめに「Makan」や「Bungkus」と言って、店員さんに伝えるとスムーズに注文できると思います。
マレー語ではなく、英語で注文したい時は、店内飲食なら”Having here.”や “Eat here.”、持ち帰りは “Take away.”と言えば大丈夫です。(ただ、英語が通じないケースもあるので、マレー語のMakanやBungkusという言葉を覚えておくと良いかもしれません)
メインディッシュに使う言葉
- Ayam(アヤム):鶏肉
- Ikan(イカン):魚
- Kambing(カンビン): マトン
- Daging(ダギン):牛肉
- Sotong(ソトン):イカ
- Udang (ウダン):海老
野菜のおかずに使う言葉
- Kobis(コビス)/ Kubis(クビス):キャベツ
- Bendi(ベンディ):オクラ
料理は指差しで注文できるので、マレー語の名称を覚えなくても大丈夫ですが、アヤムやイカン、ソトンなど基本的な言葉を知っていると、ほかのお店でも役立ちます。
カレーソースに関わる言葉
Nasi Kandar(ナシカンダー/ナシカンダール)のお店では、ご飯の上にたっぷりのカレーソースをかけてくれます。
このソースはKuah(クア)と呼ばれています。
クアは英語でグレイビーソースと呼ばれることもありますが、簡単に言うとチキンカレーやフィッシュカレーなどの料理を作った時のソースのことを意味します。
ナシカンダーのお店では、これらのクアをミックスしてご飯の上にかけて食べる形が定番で、複数のKuah(クア)をかけることで、ナシカンダーがより豊かな味わいになります。
ナシカンダー注文時に、クアを混ぜてかけて良いか尋ねる質問用語として、
「Kuah Campur(クアチャンポー)?」
…というフレーズがほぼ必ず使われるため、覚えておくことをおすすめします。
“Kuah Campur?”と聞かれたら、”Kuah Campur”と答えればOKです。
Kuah Campur(クアチャンポー)などソースのアレンジ方法
基本的には、シンプルにKuah Campurで注文する形がおすすめですが、
- クアをもっとたっぷりにしたい
- クアを少なめにしたい
- ご飯とクアを別にしたい
…など、好みに応じて色々なアレンジができます。
そんな時に便利なフレーズについて、以下に紹介します。
つゆだくにしたい時の便利なフレーズ
ご飯の上に溢れんばかりのKuah(クア)をたっぷりかけて欲しい時は、
「Kuah Banjir」
…というフレーズを使います。
Banjirは洪水という意味を持つマレー語で、ソースたっぷりのつゆだくという意味でも使います。
ただ、普通にクアをかけてくれるだけでも十分つゆだくで、Kuah Banjirにするとソースが多すぎる!という状態になるので、あえてKuah Banjirと注文しなくても大丈夫だと思います。
つゆだくにしたくない場合
少しという意味を持つSedikit(スディキッ)という言葉を使って、
「Kuah Sedikit(クア スディキッ)」
…と言えば、ソースを少なめにかけてもらうことができます。
逆に、ソースをもう少し増やして欲しい場合は、店員さんがソースをかけている時にlagi(ラギ)と言えば、ソースを追加してくれます。
ご飯とソースを別にしたい場合
ご飯とソースを完全に別にしたい時は、
「Kuah Asing(クア アシィン)」
…と言えばOKです。
Asingは外国という意味を持つマレー語ですが、食べ物を別々に分けて欲しい時にも使える便利な言葉になります。
Kuah Asingと言えば、ソースを別のお皿に入れてくれます。
マレーシア現地の人はソースたっぷりのナシカンダーが好きな人が多いものの、辛いものが苦手でカレーの量を調整したい時や、おかずの味をしっかり味わいたい時はKuah Asingという食べ方がおすすめです。(また、持ち帰りする時にKuah Asingで注文する人も多いです)
日本でもカレーライスを食べる時にも、カレーを混ぜる派と混ぜない派がいるように、食べ方の好みがあると思うので、自分の好みになるように注文してみてください。
ナシカンダー(ナシカンダール)の注文方法と流れ
通常はNasi Kandar専用のコーナーがあり、店員さんが立っています。
大まかな流れとしては、
- 店内で飲食またはお持ち帰りを選択
- お皿にご飯を盛ってもらう
- 好きなおかずを指定してお皿に乗せてもらう
- クア(カレーソース)をかけてもらう
- 会計する
…こんな感じです。
店員さんがお皿によそってくれる形が一般的ですが、お店によって自分でおかずをお皿に盛るケースもあります。
注意点
Nasi Kandarはお店によって衛生面が気になることがあり、日本人の感覚でいうと「ちょっとムリ….」というお店もあります。
実際に、マレーシアにあるナシカンダーのお店の中には行政指導が入ったり、営業停止の命令が下されたということは少なくなく、昔から衛生面の問題が取り沙汰されています。(超有名店に行政指導が入ったということがニュースになったります)
そのため、衛生面に不安を覚える場合は、ナシカンダーを無理に利用しなくても良いと思います。
また、Nasi Kandar自体は安い食べ物ですが、牛肉や羊肉、フィッシュヘッドなど選ぶ具材によっては高くなることもあるので、その点に注意してください。
まとめ
日本人にとって、Nasi Kandar(ナシカンダー/ナシカンダール)は好き嫌いが大きく分かれる料理かもしれません。
ぐちゃっとした見た目に苦手意識を持ってしまう人がいる一方、好きな人はとことん好きになる料理で、「ナシカンダー食べたいな…」と定期的に感じる中毒性のある料理でもあります。
Nasi Kandarを食べるならペナンがおすすめですが、クアラルンプールにもペナンに本店を持つNasi Kandarの支店が多くあるので、気軽に楽しむことができます。
以上、マレーシアのNasi Kandar(ナシカンダー)についての紹介でした!