ペナンで80年以上の歴史を持つMoh Teng Pheow Nyonya Koay(莫定標娘惹粿廠)。
一族三世代で伝統の味を守り続けているニョニャクエの老舗です。
この記事では、昔ながらの製法で美味しいクエを提供するMoh Teng Pheow Nyonya Koayの詳細について紹介します。
ペナンのMoh Teng Pheow Nyonya Koay(莫定標娘惹粿廠)
Moh Teng Pheow Nyonya Koayの中国語表記は、莫定標娘惹粿廠。
莫定標は創業者の名前、娘惹粿はニョニャクエ、廠は工場という意味を持ちます。
お店の立地がチュリアストリートという通りから奥に入った人目につきにくいロケーションにあることから、ちょっとした隠れ家のような、そんな存在感を放つお店です。
お店の入口前に広がるスペースは製造スペースになっています。
現在もここでニョニャクエが作られています。
昔ながらのキッチン設備(焜炉)とクエを蒸す蒸し器。
ニョニャクエを作っているところを店内で見ることができます。
クエを販売しているスペースと飲食エリアは製造スペースの奥にあります。
創業者から一族三世代に受け継がれる伝統の味
創業者は中国・海南出身のMoh Teng Pheow(莫定標)さん。
10歳の時に海南島から海を渡りペナンに移り住みます。
現在のお店がある場所でニョニャクエを作っていたプラナカンの女性(ニョニャ)のもと住み込みで働き、やがてニョニャクエ作りを学びます。
オーナーの高齢化に伴い、莫定標さんがお店を受け継ぎ、ここから莫定標娘惹粿廠の歴史がはじまりました。
2代目のMook Hian Bengさん
2代目はMoh Teng Pheow(莫定標)さんの息子さんにあたるMook Hian Bengさん。
当初、Mook Hian Bengさんのお兄さんが先代の商売を手伝っていたものの、1969年に亡くなったことを受け、まだ14歳という若さのMook Hian Bengさんが2代目となりました。
それ以来、現在に至るまで50年以上の月日をニョニャクエ作りに捧げています。
インド系売人によって販売されていたペナンのニョニャクエ
Moh Teng Pheow Nyonya Koayの店内には、お店がメディアに取り上げられた記事の切り抜きやコピーが数多く展示されています。
それらの中にインド系の人々の写真があります。
パッと見ると、ニョニャクエとインド系の人々の関係性に「なぜ?」と感じることがあるかもしれません。
これは1990年代頃までペナンで見られた光景で、インド系の人々が売り子となってニョニャクエを販売していたという歴史的背景があります。
Moh Teng Pheow Nyonya Koayは、結婚式やイベントにニョニャクエのケータリングサービスをしているほか、インド系の売人たち(ベンダー)のクエの仕入元として商売をしていたため、店内に上記のような写真が多く展示されています。
Kandar(カンダー)スタイルから自転車やバイク販売へ
上部の写真はKandar(カンダー)と呼ばれる棒の前後にかごを下げてニョニャクエとラクサを販売している画像になります。(ちなみに、右側にある画像に写っている男性が2代目のMook Hian Bengさんです)
ペナン発祥の食文化にNasi Kandar(ナシカンダー)がありますが、棒にかごをぶら下げて、ごはんやカレー、おかずなどを販売したものと同じ販売スタイルになっています。
ペナンのニョニャクエもインド系の人々によって当初はKandar(カンダー)スタイルや台車を使って販売、のちに三輪車やバイクを使って販売していたことで知られています。
Moh Teng Pheow Nyonya Koay(莫定標娘惹粿廠)のお店の前にあるストリートアート。
ここにナシカンダースタイルでニョニャクエを販売するインド系の男性が描かれている理由は上記で紹介した通りで、ペナンの古い文化とMoh Teng Pheow Nyonya Koayの歴史を物語っています。
時代の変化と商売の低迷
1990年代後半になると、ニョニャクエを販売していたインド系の売り子の高齢化や引退、または亡くなったり国に帰ったりなどといった理由により売人の数が減りました。
2000年以降はかつてのようにインド系の人々がニョニャクエを販売する姿を見かけることがなくなり、時代の移り変わりと共にMoh Teng Pheow Nyonya Koay(莫定標娘惹粿廠)の商売にも大きな影響を与えることになりました。
3代目の提案による改革と繁栄
2代目自身の高齢化に伴い「後継者がいない」として、引退&お店をたたむことを考えていたところ、Mook Hian Bengさんの娘さんや息子さんたちが立ち上がります。
2015年1月、従来の工場エリアにCanteen(食堂)スペースを作り、再スタートを切ります。
以前から、店内で座って飲食したいという顧客の要望があったこともあり、Canteen化が功を奏し、現在ではローカルのお客さんで賑わう場所になっています。
飲食スペース。
レトロな小物がディスプレイされた席もあります。
ニョニャクエはその製造プロセスにおいて、とにかく手間がかかります。
そのため、積極的にその文化を引継ぎたいという若い世代の担い手が不足していることも事実です。
それでも、2代目が先代から受け継いだ伝統の味とニョニャクエの美味しさ、そして「伝統を絶やしてしまうのは惜しい」という思いで立ち上がった3代目の気持ちが現在のお店の繁盛に繋がっています。
マレーシア初のミシュランガイドとなる「ミシュランガイド クアラルンプール&ペナン2023」では、ビブグルマンのお店として認定されています。
メニュー
上記はクエのメニュー。
定番のクエが揃っています。
メニューには各クエの名称のほか、原材料が記載されています。
ニョニャクエ以外にフードメニューもあります。
Nasi Ulam(ナシウラム)、Laksa(ラクサ)、 Nasi Kunyit(ナシクニ)、Nasi Lemak(ナシルマ)、 Pie Tee(パイティー)、 Jiu Hu Char(ジューフーチャー)があります。
Pie Tee(パイティー)はニョニャ料理の定番前菜、Jiu Hu Char(ジューフーチャー)はJicamaという野菜と細長に刻まれた干しイカを炒めて作るニョニャ料理の定番サイドディッシュです。
Nasi Kunyit(ナシクニ)はターメリックとココナッツミルクで炊いたもち米で、カレーチキンと一緒にいただく形が一般的です。
Nasi Kunyit(ナシクニ)に関しては金・土・日の曜日限定メニューになっているので、その点に注意してください。
ドリンクメニュー。
注文方法
店内で飲食する場合は各テーブルにある注文票を使います。
DINE INの箇所にある「Table No.」に座っているテーブルの番号、「Pax」に人数、 各メニューの横にある「QTY」に欲しい数量を記入の上、店員さんに注文票を渡します。
会計は食後にカウンターで行います。
Moh Teng Pheow Nyonya Koayのニョニャクエ
Moh Teng Pheow Nyonya Koayのニョニャクエは一口サイズで、市場やそのほかのニョニャクエ専門店で見かける一般的なサイズよりもかなり小さめです。(一部のクエは通常サイズのものもあります)
クエを注文すると、お皿に載せてテーブルまで運んでくれます。
後方にあるバナナリーフに包まれたクエはKuih Koci Santan、前方にあるクエは向かって左からKuih Bengka Purple、Kuih Talam、Pulut Tai Tai(Pulut Kaya)、Chai Tau Kuihになります。
Chai Tau Kuihは米粉と大根を使ったクエでピーナッツがトッピングになっています。
Pulut Tai Tai(プルッ タイタイ)はバタフライピーで青色に色づけしたもち米のベースにカヤジャムを載せていただくクエです。
自家製のカヤが非常に美味しく、おすすめの一品です。
お店自家製のカヤは店内で販売しています。
自宅でカヤトーストを楽しむこともできます。
Kuih Koci Santan(クエ コチ サンタン)もおすすめです。
Kuih Koci(クエコチ)はもち米粉ベースの生地に、グラマラッカで味つけしたココナッツフレークを包み込んで蒸したクエです。
クエ コチ サンタンは通常のクエコチにココナッツミルクを加えているところがその特徴です。
Santan(サンタン)という言葉は、マレー語でココナッツミルクという意味があります。
柔らかな食感で、新鮮さを感じることができます。
クエ コチ サンタンに関しては、通常サイズの大きさでボリュームがあります。
Nasi LemakやLaksaもおすすめ
ニョニャスタイルのNasi Lemak。
マレー系の人たちが作る一般的なNasi Lemakとは異なり、つけ合わせにAssam Prawn(アッサム プローン)が使われているところが特徴です。
また、Assam Fish(アッサム フィッシュ)もセットになっています。
スライスきゅうりの上に乗っているペーストはSambal Belachan(サンバル ブラチャン)というチリソース。
様々なハーブを使ったニョニャスタイルバーブライスのNasi Ulam(ナシ ウラム)。
香りを楽しむことができる一品です。
Laksa(ラクサ)。
ペナン名物のアッサムラクサもいただくことができます。
Moh Teng Pheow Nyonya Koay(莫定標娘惹粿廠)のフードメニューの中ではNasi Kunyitも人気ですが、Nasi LemakやLaksaもおすすめです。
特にニョニャスタイルのNasi Lemakを食べてみたい時は同店のNasi Lemakはおすすめすることができます。
ドリンク類
ナツメグのジュース。
ナツメグはペナンの名産品です。
ローズシロップにミルクをミックスしたGu Leng Peng。
Gu Leng Pengは福建語の発音で、一般的にはSirap BandungやAir Bandungと呼ばれている飲み物になります。
ロケーション&アクセス方法
住所:Lebuh Chulia, Jalan Masjid, 10200 George Town, Pulau Pinang
大通りから奥に入った場所にお店があるため少しわかりにくい面があるものの、Chulia StreetにあるYeng Keng Hotelのすぐ近くにあるので、このホテルを目印にして行くとわかりやすいと思います。
こちらがYeng Keng Hotel。
この前にある通りがChulia Streetになります。
進行方向に対しホテルを左手側にして歩いて行くと、角に槐記茶室というコピティアムがあり、ここを左側に曲がった先にMoh Teng Pheow Nyonya Koay(莫定標娘惹粿廠)があります。
お店の定休日は月曜日です。
まとめ:昔ながらの製法で作られた伝統ニョニャクエを楽しめる場所
伝統製法で丁寧に手作りされたクエはココナッツやパンダンの香りの良さ、適度な甘みと食感など、これらのバランスが絶妙です。
中国語に昔懐かしい味という意味を持つ「古早味」という表現がありますが、Moh Teng Pheow Nyonya Koay(莫定標娘惹粿廠)では、そんな昔ながらの美味しいクエを食べることができます。
ペナンで伝統的なニョニャクエが食べたいという時は、Moh Teng Pheow Nyonya Koayに足を運んでみてください。
また、ペナンのPulau Tikusにある莉儿(Li Er)というニョニャクエ専門店も非常におすすめです。