“果物の王様”…という異名を持つドリアン。
その強烈な香りから「臭い!」と敬遠されるがことが多いものの、実際のところ、旬の時期に食べるマレーシアのドリアンは格別に美味しいです。
はじめて口にする時は、その独特な香り・味・食感に抵抗感を抱く人が多いものの、好きになる人はとことんハマってしまう、そんな魅力を持つフルーツです。
この記事では人気品種のムサンキングをはじめ、マレーシアのドリアンの種類と旬を解説した上で、購入スポットや食べ方について紹介します。
果物の王様、ドリアンに関わる豆知識
ドリアンの発祥地は、ボルネオとスマトラ。
主な生産地はマレーシアやインドネシアのほか、タイになります。
ドリアンの語源
ドリアン語源は、マレー語のDuri(ドゥリ)。
Duriは英語でThorn、日本語でトゲを意味します。
Duriの複数形がDurian。
そのトゲトゲの見た目からドリアン(Durian)と呼ばれるようになりました。
ドリアンの木
ペナンにあるドリアン農園で撮影したドリアンの木。
花が咲いた後に実が成り、どんどん大きくなり、完熟したドリアンは自然に落下します。
ドリアン農園では、木の周りにネットを張り巡らせ、ドリアンの収穫をしています。
マレーシアにおけるドリアンの旬の時期(シーズン)
ドリアンの旬の時期は、年に2回。
同じマレーシアでも半島の北部と南部、そして半島側とボルネオ島側など場所によって旬の時期が若干異なりますが、メインは5月中旬〜8月、ピークは7月あたりです。
一般的には、北部にあるペナンから旬がスタート、次第にPerak(ペラ)やPahang(パハン)、そしてSabah(サバ)など、マレーシア全土に広がっていきます。
旬のシーズンはモンスーンの影響を受ける
収穫の時期はモンスーン(北東モンスーンと南西モンスーン)の影響によるところが大きいと言えます。
モンスーンのあとに来る乾季に開花、そして開花するとドリアンの収穫時期がある程度決まるため、その年によって旬の時期は前後します。
美味しいドリアンを食べるポイントは旬
旬の時期以外はマレーシア産ではない輸入品のものが出回っていますが、マレーシアで本当に美味しいドリアンが食べたい時は旬の時期にローカル産のものを食べる、これが鉄則です。
ドリアンのシーズンがはじまると、ローカルの人々がこぞってドリアンを買い求める理由はここにあります。
いつでも美味しいものが食べれるわけではなく、旬の時期に食べるということが最大のポイントになます。
ドリアンの味
「ドリアン=臭い」
というイメージがあるかもしれませんが、その匂いに慣れると「良い香り…」と感じるようになります。
また、非常に奥行き深い味を持つ果物であり、ドリアンのテイストを表現する時…
- 甘み
- 苦味
- liquor(アルコール)のような味
このような言葉が使われることが多く、甘みだけが強いもの、甘みと苦味があるもの、甘み・苦味に加え、アルコール(蒸留酒)のようなテイストがするものなど、様々です。
また、同じ種類のドリアンでも、若い木から収穫されたものと古い木から収穫されたもので味の奥行きが異なります。
樹齢10年程度の若い木から採れたドリアンは甘い・苦いというテイストだけで、アルコールのような奥深いテイストがなかなか出せないと言われていて、一般的には樹齢の長い、古い木のドリアンが好まれています。
お店の人が「このドリアンは老樹(老树)のものだよ」と言って販売していることもありますが、商品情報に記載して強調しているケースもあります。
ドリアンの食感
クリーミーです。
ドリアンの種類によって度合いが異なりますが、カスタードのようなしっとりとしたクリームを思わせる食感です。
ドリアンの栄養価
栄養価が高い食べ物として位置づけられています。
カロリーが高い一方で、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富です。
私自身、万年冷え性であるものの、ドリアンを食べた後は「体がポカポカと温かくなる」と感じます。
ただし、ドリアンは”heaty fruit”と呼ばれ、陰陽で言う陽、つまり体を温める果物で、食べ過ぎると体が火照ることからよくないとされています。
陰陽のバランスを取るために、陽のドリアンを食べたあとは陰のものを食べて体のバランスを保つという考え方もあり、例えば陰の果物であるマンゴスチンを食べる…という人もいます。
マンゴスチンの旬もドリアンと同じで、一緒に販売されていることがよくあるので、ドリアンとマンゴスチンを同時に購入する形もおすすめです。
マレーシアにおけるドリアンの種類
マレーシアのドリアンは、政府(Department of Agriculture, 通称DOA)がコントロールを行い、新種開発に携わる人々の知的財産とも言える「育成者権利」を守るためのPlant Variety Protection (PVP)に基づき、1934年以降、一つ一つの種類がリストに登録されています。
その登録数は数百に及びます。
ドリアン(Durian)の頭文字であるDを取って、D1からはじまり「D+登録番号」という形で、登録年や申請者氏名、種類の詳細情報が管理されています。
一方で、リストに登録されていないドリアンも多く、それらは総称でKampung Durian(カンポンドリアン)と呼ばれています。
定番人気のドリアン【品種一覧】
色々な種類のドリアンがある中、クアラルンプールでよく見かける定番人気は以下の通り。
- 猫山王(Musang King)
- 黑刺(Black Thorn)
- 金凤凰(Kim Hong / Golden Phoenix)
- 竹脚(Tracka / Tenka)
- 红虾(Red Prawn / Udang Merah)
- 葫芦(Horlor)
- XO
- D101
- D24
- Jantung
D101やD24のように登録番号がそのまま使われているものから、猫山王や黒刺など、通称名で親しまれているものがあります。
通称名はそれぞれのドリアンの特徴を表しているケースがほとんどです。
例えば⑥の葫芦は中国語で瓢箪(ひょうたん)という意味があり、ドリアンの形が瓢箪に似ていることからつけられたもの、⑦のXOはブランデーのような味がすることからXOと名付けられています。
また、上記定番のドリアンのほか、新しいハイブリッド種のドリアンも色々あります。
一番人気はムサンキング
ドリアンの王様と言われる定番人気はムサンキング。
ムサンキングはRaja Kunyit(ラジャクニッ)と呼ばれることもあります。
中国語表記は猫山王(Mao Shan Wang)。
登録番号はD197で、1993年にDOAに登録されました。
底の部分にある大きな星型のマークがムサンキングの特徴になります。
現在、ムサンキングの産地として有名な場所は、マレーシアのPahang(パハン)州にあるRaubですが、ムサンキングの起源はクランタン州。
ムサンキングの親木となるものが、Kelantan(クランタン)州にルーツを持つドリアンのRaja Kunyit(ラジャクニッ)で、中国からの移民であるChung Chun Sengによって、1794年にクランタンのTanah Merah(タナメラ)のPulau RayaにRaja Kunyitの苗が植えられたことがはじまりになります。
当初はクランタンのローカルの人だけで知るドリアンであったものの、クランタンのGua Musangという場所からドリアンの木の枝を持ち帰り、接ぎ木してRaubで栽培されるようになったものがムサンキングで、これが世界的に有名なドリアンとしての知名度を誇っています。
高級ドリアンの黒刺
登録番号D200、ペナン発祥の黒刺(Black Thorn)は新しい種類のドリアンで、近年高い注目を集めています。
手前にあるドリアンがムサンキングになりますが、ムサンキングと比較して、黒刺はややオレンジがかった色をしているところが特徴で、味もムサンキング以上に美味しいです。
価格は定番人気のMusang King(ムサンキング)よりも高いケースが多く、高級品という位置づけになっています。
ムサンキングの前に人気のあったD24
1937年にMOAに登録されたD24は昔からあるドリアンです。
ムサンキングが登場するまでは、最も高い人気を誇っていたという歴史を持っています。
ドリアンの価格
ドリアンの価格は品種や購入場所によって異なることはもちろん、その年の収穫量、シーズン中の需要と供給のバランスによって変動します。
そのため、上記の価格表は参考程度にしかなりませんが、黒刺が最も高く、その次に猫山王、その後に竹脚やレッドプローンやホーローなどが続くイメージです。
竹脚も、現在は栽培する農家が減少し供給量が少なめであることから、価格が割と高めになっていることが多いです。
ドリアンの価格はキロあたりのものになります。
上記は2019年時点のあるお店の価格表ですが、2023年7月現在、ドリアンの価格はかなり高くなっていて、黒刺とムサンキングが1キロあたりRM110くらいしました。(日本円で1キロ3,300円以上)
2024年については、2023年よりも価格が安くなっていました。
おすすめのドリアンの品種
ここからはマレーシアで食べる、おすすめのドリアンの品種について紹介します。
おすすめは、
- 猫山王(ムサンキング )
- レッドプローン
- XO
一番美味しいと感じているのは黒刺ですが、価格がかなり高めであることが多いので、ここでは定番のムサンキング、レッドプローン、XOを紹介しています。
猫山王(ムサンキング)
マレーシアではじめてドリアンを食べるのであれば、猫山王(ムサンキング)をチョイスすることをおすすめします。
明るいイエローの色味が特徴で、甘さの中にほんのりとした苦さがあり、非常に濃厚なテイストのドリアンです。
ほかのドリアンと比較して、ムサンキングは香りの高さと味の濃厚さが際立っています。
その味は格別です。
レッドプローン
レッドプローンもおすすめです。
オレンジっぽい色味が特徴で、クリーミーな食感に強めの甘み、苦味がほとんどないことから、非常に食べやすいドリアンです。
芳醇なアルコールのテイストも少しあるため、ドリアンの美味しさを堪能することができます。
価格も黒刺(Black Thorn)や猫山王(ムサンキング)と比較すると、お手頃価格です。
XO
ほんのりとした苦味を持つXO。
アルコールを思わせる香り高いXOは大人向けのテイストになっていますが、深い香り楽しむことができます。
【参考情報】色味の比較
白っぽいイエロー、ビビッドなイエロー、オレンジっぽいイエローなど、色々な色味があります。
D24。
HorLor。
金凤凰。
D13。
Mas Johor。
D88。
上記画像はムサンキングとD24を比較したものになります。
ペールホワイトのような、やや白っぽいD24と比較して、ムサンキングは鮮やかなイエローカラーが際立っています。
ドリアンの割り方と食べ方
お店でドリアンを丸ごと購入した場合の食べ方について紹介します。
ドリアンを選ぶと、お店の方が下の画像のようにドリアンの一部をカットしてくれます。
こんな状態で提供してくれます。
ちなみに、上記画像のドリアンはD101です。
まずは、上に乗ったドリアンをいただきます。
表面のドリアンを全部食べた後は、ドリアンを割って中に入っている実を取り出します。
両手を使って、矢印の方向に力を加えていきます。
ここで注意すべきポイントとしては、ゆっくりと開くこと。
勢いよく開くと、実が下に落ちてしまいます。
全ての実を取り出した状態がこちら。
こんな感じで、ドリアンを割って食べていきます。
ドリアンの種。
丸みをおびた種または平たい種が入っています。
ドリアンの購入スポット
スーパーのほか、アロー通り、Chow KitやPudu、チャイナタウンなど色々なところで購入することができますが、クアラルンプールで有名な購入スポットはクアラルンプール郊外にあるPetaling JayaのSS2というエリア。
この周辺にはドリアンのお店がたくさんあり、旬の時期になると多くのローカルのお客さんでどのお店も混み合っています。
特に有名なお店がDurianMan SS2です。
DurianMan SS2
2019年7月、Durian SS2から店名を変更して新装開店したものがDurianMan SS2。
新しい店舗は二階建てになっています。
店内は多くのお客さんで賑わっています。
真空パック対応もしてくれます。
普通のタッパーに入れただけの状態では匂いが容器から漏れてしまいますが、真空パックにすると匂いません。
DurianManのドリアンはGrabFood利用でデリバリーも可能です。
GrabFoodでの注文で注文すると、真空パックに入った状態で届けてくれます。
上記は1 BOX(300g)で注文したムサンキング。
GrabFoodでDurianManを利用することのメリットは指定した場所に届けてくれるというデリバリー対応だけではなく、1人で1つのドリアンを食べるには多過ぎる…という時に適度な量をチョイスできる点にもあります。
DurianManのロケーション
DurianMan SS2は、ほかのお店と比較してやや高めの価格設定になっていますが、ドリアンの種類と量が豊富です。
グレードの高いドリアンが揃っているので、価格は高いものの、ハズレが少ないと言えます。
ただ、DurianManのドリアンは高過ぎる…という面は否定できないので、コスパを重視する場合は、SS2周辺にあるお店と比較してみても良いかもしれません。
SS2には、DurianMan以外にもたくさんのドリアンを販売するお店があります。
アロー通り
旅行者の人に便利なアロー通り。
ドリアンの旬の時期になると、露店でドリアンを販売しています。
観光客が多いエリアなので、価格の高い黒刺やムサンキングが多く揃っています。
価格に関しては、上記で紹介したDurian Manと同じくらいの水準です。
Durian King TTDI
TTDIにあるDurian King TTDI。
TTDI市場の駐車場エリアで営業しているこじんまりとしたお店ですが、大規模なお店よりも使いやすいです。
ドリアンの種類や量は少なめですが、質の良いドリアンが揃っています。
またDurian King TTDIにはDurian Cendol(ドリアンチェンドル)があり、これがこのお店の人気メニューになっています。
上記画像のチェンドルはドリアンとチェンドルを別々に購入したため、ドリアンが乗っていませんが、Durian Cendol(ドリアンチェンドル)として注文するとチェンドルの上にドリアンが乗った状態で提供してくれます。
好きなドリアンがある時は、ドリアンを別に購入して、チェンドルと一緒に食べる形もおすすめです。
ちなみに、上記のドリアンはJantungというドリアンになります。
Lucky D Kooling
Bangsar(バンサー)にあるスーパーのTMCの裏でドリアンを販売しているお店もおすすめです。
バンを使って販売しているので、規模は小さいものの、店主の方がドリアンの状態をしっかり見極めて、良いものを提供してくれるところがおすすめポイントです。
美味しいドリアンを食べるためには、きちんと目利きできる人に選んでもらうこともポイントになります。
大規模なドリアンのお店に行くと、担当してくれる人に当たり外れがあることがあるものの、上記のお店はしっかりと時間をかけて良いドリアンを見極めた上で販売してくれるので、個人的に気に入っているお店です。
BangsarのTMC周辺には、路上でドリアンを販売しているお店がほかにもいくつかあり、TMCの前にある露店ではムサンキングが割と安く購入できました。
Sinnaco Durian Specialist
住所:28, Jln 19/3, Seksyen 19, 46300 Petaling Jaya, Selangor
SS2エリアから車で6分くらいのSS19にあるSinnaco Durian Specialist。
良い品質のドリアンを取り扱っていて、割と良心的な価格で販売しています。
SS2にあるお店ほど混み合うことがないので、混雑を避けたい時に便利なお店です。
ペナンの購入スポット
ペナンではBalik Pulauがドリアン産地として有名で、Bao Shen Durian Farmなど、観光客に人気のドリアン農園があります。
住所:150 Mk2 Sungai Pinang, Balik Pulau, 11000 Penang, Pulau Pinang
ドリアンブュッフェがあるほか、Bao Shengには宿泊設備もあり、ドリアンを食べる+泊まるという体験が可能です。
ペナンにはクアラルンプールではあまり見かけない種類のドリアンが多く、価格も比較的安いものが多いので、色々なドリアンを食べてみたいという時におすすめのスポットです。
Balik Pulauには色々な農園があり、以下の記事で紹介しているドリアン農園もBalik Pulauにあるものになります。
ドリアンの購入方法&プロセス
- お店の方に欲しいドリアンの種類を伝える
- お店の方が適切なものをピックアップ(気に入らない場合は希望を伝えて別のドリアン選択も可)
- ドリアンの一部をカットしてくれるので、中身の状態を確認(虫が入っていないか、ドリアンが熟しているかチェック)
- 問題なければ、お店の人が重量チェック
- お店で食べるか持ち帰りにするかを選択
- お店で食べる場合は好きな座席に座る
- 注文票をカウンターに持っていき清算
大抵はこんな流れで注文・購入します。
こちらはDurianManで使われている注文票。
48というのは1Kgあたりの価格、1.9は購入したドリアンの重量(Kg)になります。
ドリアンを食べた後にこの注文票を持ってカウンターで清算します。
上記の注文フローは高価なドリアンを扱う割と大きなお店での流れになります。
路上販売でもドリアンの品質を保証しているお店であれば、ドリアンの一部をカットして中身を見せてくれるので、状態を確認した上で購入できます。
激安のカンポンドリアンを販売しているお店のなかには、品質保証なし(交換できない)というケースもあるので、保証しているのか、保証していないのか、購入前に確認してみても良いと思います。
路上でドリアンを購入する時の注意事項
路上で販売されているドリアンを購入する時の注意事項です。
大型のドリアン店と比較して安価に購入できるものの、計量時に注意が必要なケースがあります。
私自身、騙されそうになった経験があり、その時ははかりに細工が施されていて、客側に示される重量が本来の倍になっているというものでした。
こういうケースもあるので、旅行者の方は路上で購入するよりもDurianManあたりの大型店に足を運ぶ方がおすすめです。
ただ、路上で販売されているドリアンは上記のお店より安いので、ケースバイケースで使い分けても良いと思います。
まとめ:旬の時期に食べるドリアンは最高に美味しい
はじめてドリアンを食べる時、慣れない香りや食感に抵抗感を覚えるかもしれません。
ただし、旬の時期に食べる新鮮なドリアンは非常に美味しいです。
“本当に美味しいドリアン”に巡り合うと、その芳醇な香りや奥深い味わいにどっぷりハマってしまいます。
ドリアンのシーズン中、マレーシアを訪れることがあれば、是非現地で美味しいドリアンを食べてみてください。
以上、マレーシアで食べるおすすめのドリアンの種類と購入スポットについての紹介でした!