マラッカを代表する観光スポットの一つ、ババニョニャヘリテージ博物館。
プラナカンの一族が実際に暮らした邸宅を博物館にしたハウスミュージアムです。
中国・マレー・オランダ・ポルトガル・コロニアルなど、異なる様式を取り込んだ邸宅は、一族の豊かな暮らしぶりやプラナカンの人々の生活模様を肌で感じることができる場所になっています。
この記事ではババニョニャヘリテージ博物館の概要と一族の歴史、見学のポイントについてご紹介します。
マラッカのババニョニャヘリテージ博物館の概要
ババニョニャヘリテージ博物館(Baba & Nyonya Heritage Museum)は1896年に建立された曾(Chan)一族の邸宅がもとになっているもので、4世代に及ぶ曾一族が実際にこの場所で暮らした歴史を持ちます。
土地自体は1861年に一族が獲得したことから、建物の前にある看板には“Since 1861”の文字が刻み込まれています。
タウンハウスと呼ばれる邸宅は3つのテラスロット(No.48・No.50・No.52)で構成されていて、2つのロット(No.48&No.50)は一族の生活スペース、残り1つ(No.52)は使用人のスペースとして使われていました。
曾(Chan)一族と博物館になるまでの経緯
現在、7世代目にまで及ぶ曾一族。
邸宅を建てたのは2世代目の曾清秀(Chan Cheng Siew)です。
向かって右側にある肖像画の人物が曾清秀(Chan Cheng Siew)。
彼自身はマレー半島で生まれたプラナカンチャイニーズ、海峡華人(Straits Chinese)の第2世代にあたりますが、一族の起源は中国福建省の同安になります。
2世代目の曾清秀(Chan Cheng Siew)
1865年生まれの曾清秀(Chan Cheng Siew)。
元々は槟榔(ビンラン)のプランテーション事業に携わっていたものの、将来性や市場の需要を見越して後にゴム事業に参入します。
マラッカにおける社交活動にも積極的に参加し、邸宅で宴会を開くなど華やかな暮らしを送っていたことで知られています。
1919年に54歳で亡くなったのち、彼の息子である曾胜旗(Chan Seng Kee)が邸宅を相続します。
3世代目の曾胜旗(Chan Seng Kee)
一族の3世代目にあたる曾胜旗(Chan Seng Kee)は、父とは正反対に都会の賑やかな暮らしぶりや騒音を嫌い、邸宅から5キロほど離れたマラッカのKlebang besarという静かな海沿いのエリアに別荘を建てます。(1932年に完成)
別荘と本宅を行き来する生活を第二次世界大戦前まで続けたのち、日本軍がマレー半島に上陸し、侵攻を受けた戦時中は主に別荘で生活していました。
邸宅から博物館へ
戦後、一族は邸宅に戻るものの、時代の流れや子供たちの成長とともに、次第に一族が暮らす場所ではなく祖先を祀る場所へと邸宅の機能が変化します。
博物館として開館したのは1985年。
曾胜旗(Chan Seng Kee)の長男で一族の4世代目にあたるCharlie Chan Kim Lay氏がオーナーとなり、開館しました。
博物館は現在も一族の経営下にあり、集合写真が館内に展示されています。
曾一族のルーツをまとめた本が出版
曾一族の歴史についてまとめた本(”Stories of One Malaccan Family”)が2018年に出版されています。
この本は5世代目のMelissa Chanさんが執筆したもので、Melissaさんの父でありCharlie Chan Kim Layさんの弟であるHenry Chan Kim Chengさんが共著者となっています。
館内で販売しているほか、クアラルンプールの紀伊国屋などの書店でも取り扱いがあります。
ババニョニャヘリテージ博物館の入場料金と館内ルール
ババニョニャヘリテージ博物館(Baba & Nyonya Heritage Museum)の入場料金や館内での注意事項は入口前にあるゲート部分に掲示されています。
入場料金
- 大人:RM18
- 子供(*5〜11歳):RM13
- ガイドつきツアー:RM25
(*価格は2024年10月時点の情報に基づきます。)
博物館の中に入ると待合エリアがあり、担当者が声をかけてくれるので、その時に入場料を支払います。
セルフツアーとガイドつきツアー
ババニョニャヘリテージ博物館(Baba & Nyonya Heritage Museum)の見学は、セルフツアーとガイドつきツアーから選択することができます。
セルフツアーは博物館側が用意した冊子(ガイドブック)を使って、自由に館内を見てまわることができるというものです。
冊子の内容が充実しているので、セルフガイドでも十分理解を深めることが可能です。
セルフツアーは多言語対応していて、日本語の冊子もあります。
館内での注意事項
- 館内の定められたエリア以外では撮影禁止
- 飲食禁止
- 展示物に手を触れないこと
また、もう一つの注意事項としては、1階エリアにある階段以降から2階エリアにかけて土足厳禁になっている点です。
ババニョニャヘリテージ博物館(Baba & Nyonya Heritage Museum)にある階段は歴史的価値のあるもので、見所の一つになっています。
写真撮影は待合コーナーまで
待合エリアから見える邸宅の内装。
ここから先のエリアは撮影禁止となっています。
邸宅には応接室、ダイニングルーム、祖先を祀るホール、キッチン、中庭、婚礼の部屋、書斎などがあり、プラナカンの暮らしを理解することができるようになっています。
広々としたキッチンエリアにはプラナカンの陶器やキッチンウェアなどが展示されているほか、プラナカンのお葬式の色として使われるブルーと白でまとめられた喪中の部屋もあります。
また、博物館内にはちょっとしたお土産コーナーがあり、ここでバッグやタイルなどを購入することができます。
ババニョニャヘリテージ博物館のロケーション
住所:48-50, Jalan Tun Tan Cheng Lock, 75200 Melaka
ババニョニャヘリテージ博物館はジョンカーストリート(Jalan Hang Jebat)の一本隣にあるJalan Tun Tan Cheng Lockという通りにあります。
ババニョニャヘリテージ博物館の開館時間
- 月〜木:10時〜16時15分
- 金〜日:10時〜16時45分
(*2024年10月時点の情報に基づきます。)
曜日によって閉館時間が異なるので注意してください。
また、最終入場時間が設定されていて、閉館ギリギリに滑り込むことができない点にも注意が必要です。
ペナンプラナカンマンションとの違い
マレーシアにおけるプラナカン文化に興味を持っている方は、ペナンにあるプラナカンマンション(Pinang Peranakan Mansion)との違いについて疑問に思うことがあるかもしれません。
規模の大きさから言うと、プラナカンマンションの方が上で、現オーナーの数々のきらびやかなアンティークコレクションがたっぷりつまった場所になっています。
ニョニャたちが使っていた豪華なジュエリーやビーズ刺繍のバッグやスリッパの展示物が多く、キラキラしたものが好きな方にはかなり楽しい場所です。
ババニョニャヘリテージ博物館の「ここが良い!」というポイント
マラッカのババニョニャヘリテージ博物館はプラナカンの日々の暮らしぶりをより身近に感じることができる場所になっていると感じています。
見所ポイントがセルフガイドの冊子に日本語でしっかりまとめられている点も良いポイントです。
ペナンのプラナカンマンションには英語と中国語のガイドサービスがあるものの、ガイドなしで見学する場合は各展示物にさりげなく書かれている英語の説明書きを一つずつ読む必要があります。
マラッカのババニョニャヘリテージ博物館は、日本語でプラナカン文化について理解を深めたいという方に優しい場所になっています。
ただし、プラナカンマンションは非常に見応えのある場所なので、プラナカンに興味がある方は足を運ぶことをおすすめします。
まとめ:マラッカで足を運ぶべき観光スポット
ババニョニャヘリテージ博物館はプラナカン文化を継承するマラッカにおいて足を運ぶべき観光スポットの一つであり、シンガポールの第7代目大統領であったTony Tan氏や中国の第6代国家首席であった胡錦濤氏など、各国の要人が訪れた場所でもあります。
上記で紹介した博物館の概要や曾一族についての情報は、ババニョニャヘリテージ博物館(Baba & Nyonya Heritage Museum)公式サイトに掲載されている内容をもとにしています。
同サイトでは包括的な意味でのプラナカンについて説明している記事もあり、ババニョニャについて理解する非常に良いサイトになっています。
ババニョニャヘリテージ博物館を訪れる前に最新情報含め、目を通してみることをおすすめします。
以上、マラッカのババニョニャヘリテージ博物館(Baba & Nyonya Heritage Museum)についての紹介でした!