台北の大稻埕にある有記名茶(WANG TEA)。
100年以上の歴史を持つ老舗の有記名茶は、茶葉を購入する場所としてだけではなく、工場見学を通じ茶葉の精製プロセスや台湾茶について学ぶことができる、“教育の場”になっています。
100年以上の歴史を持つ老舗
創業1890年の有記名茶(WANG TEA)。
その起源は中国に遡ります。
創業ストーリー
創業者は福建省泉州市安溪出身の王敬輝さん。
鉄観音の発祥地として知られる安溪で、代々続く茶農家の家系に生まれました。
1890年、王敬輝さんが廈門に開いた「王有記茶莊」が有記名茶のはじまりです。
市場開拓のためタイと台湾へ
王敬輝さんの息子さんにあたる2代目の王孝謹さんは「開拓の人」です。
1907年、タイに進出。
同国における烏龍茶市場で大きなシェアを占めるようになり、その後、現地で子会社を立ち上げます。
台湾にお茶の精製工場を立ち上げたのが1935年。
1937年には、3代目の王澄清さんが17歳という年齢で中国から台湾に渡り、父親の商売を手伝うようになります。
伝統と革新
現在は、4代目の王連源さん、さらには5代目と有記名茶は時代をこえて代々受け継がれています。
2004年、伝統を重んじつつ革新に取り組む王連源さんは台北の大稻埕にある製茶工場を大幅に改修し、
- お茶製品の販売場所
- 台湾茶の歴史や製茶について学べる「小さな博物館」
…という空間に作り変えました。
お客さんに台湾茶の歴史やお茶の楽しみ方を知って欲しいという思いが根底にあり、これが有記名茶の特徴になっています。
有記名茶(WANG TEA)の店内と工場見学
店内の前方は茶葉を販売するエリア、後方に工場があります。
店内では様々なお茶商品の販売をしています。
有記名茶の5代目が立ち上げた「飲Joy」は、伝統のお茶を普段の生活の中で楽しむというコンセプトで作られた商品シリーズで、「飲Joy」は英語のEnjoyにかけた言葉になります。
有記名茶で取り扱いのあるお茶
- 高山烏龍茶
- 文山包種茶
- 奇種烏龍(高山/包種茶)
- 鉄観音
- 東方美人
- 緑茶
- 紅茶
ユニークな商品は奇種烏龍シリーズ。
炭火による焙煎で作られた有記のオリジナル商品で、一般的な包種茶や高山烏龍茶よりも高い焙煎度であることから、より深い風味になっています。
こちらは高山烏龍茶。
茶筒に入った商品のほか、茶葉のみを購入することも可能です。
高山烏龍茶にはいくつかのグレードがあり、予算に応じて好きなものを選ぶことができます。
有記名茶(WANG TEA)で2種類のグレードの高山烏龍茶の茶葉を購入してみたことがあります。
一つは一斤(600g)あたりNT$6,400、もう一つはNT$4,800、150g単位で購入したので、それぞれNT$1,600とNT$1,200という価格でした。
少し高めだな…というのが正直なところですが、もう少しお手頃価格の茶葉も揃っています。
試飲も可能です。
どの茶葉を選んで良いかわからない時はお店の方に相談してみてください。
お茶の基礎知識を学ぶ
店内には以下の表があり、お茶の基本について学ぶことができます。
緑茶、紅茶、鉄観音、高山烏龍茶、凍頂烏龍茶、文山包種茶、奇種烏龍茶など、それぞれの特徴がぱぱっと理解できるようになっています。
台湾には様々な茶葉があるため、この表を頭の中に入れておくと、台湾でお茶選びをする時に役立ちます。
工場見学の詳細
工場見学は終日行っているわけではなく、以下の決められた曜日と時間に実施されています。
- 月曜日〜金曜日
- 10:00〜11:30および14:00〜17:00
工場見学は要予約となっていますが、私がお店を訪問した時は工場見学を希望するお客さんが他にいなかったこともあり、「今から工場見学できますか?」と聞いて快諾してもらえました。
確実に工場見学したい時は予約することをおすすめしますが、その場で見学できないかお店の方に声をかけて聞いてみても良いと思います。
工場エリアは製茶の過程を学ぶことができる場所になっています。
製茶プロセスを学ぶ
製茶(毛茶の加工)のプロセスと、それぞれの過程で使用される機械や設備についての説明書き。
日本語の説明書きがある上、案内してくれるお店の方はとても親切です。
希少価値のある焙籠間
有記名茶の工場見学の目玉は、何と言ってもこの空間。
中国語で焙籠間と呼ばれるスペースで、木炭による茶葉の火入れを行う焙煎室になります。
現在では機械による火入れを行っているところがほとんどで、伝統の焙籠間を使い続けている茶工場は滅多になく、有記名茶(WANG TEA)のみとなっているそうです。
炭火でじっくりと茶葉をの火入れをする伝統の手法により作られたお茶は、その茶葉が持つ自然な味を引き出すことができると言われています。
竹で作られた籠は焙籠、木炭を入れる空洞になったスペースは焙窟と呼ばれています。
それぞれの大きさは以下の通り。
- 焙籠→直径:約60cm、高さ:約55cm
- 焙窟→直径:約52cm、高さ:約58cm
焙窟の間には通路があり、この通路を職人さんが歩きまわり、作業を行います。
焙窟には一度に60kgもの木炭を入れることができ、木炭は2〜3週間燃え続けます。
木炭を入れた後、隙間を埋めるように木炭を細かく砕き、その上に炭化した籾殻を重ねた上で着火します。
全てが燃えた後に焙籠を乗せて茶葉の火入れを行います。
焙籠間で職人さんがどんな作業をするのかについて、イラストつきで解説されています。
焙窟に入れた木炭を砕き、その上に籾殻を重ねているところです。
これらのイラストに記載された説明を読むと一連の流れを把握することができます。
日本語での説明書きも丁寧で、非常にわかりやすいものになっています。
実際の作業に使われる道具も工場内で見ることができます。
工場見学の途中、お店の方が「これ、何かわかりますか?」と言って、ふわふわとした綿飴のようなものを持ってきてくれました。
答えを聞いた時の回答が…
「咖啡因」
そう、カフェインです。
製茶加工プロセスで排出されたカフェインの糟を見せてくれたのですが、実物を見たのは初めてだったので、貴重な体験ができました。
台北大稻埕 有記名茶(WANG TEA)のロケーション
有記名茶(WANG TEA)の販売店舗はいくつかありますが、ここでは台北の大稻埕にある店舗のロケーションについて紹介します。
住所:台北市大同區重慶北路二段64巷26號
MRT北門駅および大橋頭駅の双方からアクセスが可能で、どちらの駅からも徒歩で13分程度の距離になります。
営業時間は9:00〜18:00、定休日は日曜日です。
お店は重慶北路二段という大通りの側にあり、目の前にある朝陽茶葉公園が目印になります。
大橋頭駅の2番出口の側に重慶北路二段があるので、大通りを沿って歩いていく形がわかりやすいと思います。
大稻埕にある有記名茶(WANG TEA)は、問屋街の迪化街のメインストリートからもアクセスできるので、迪化街観光とセットにする形がおすすめです。
Wangtea Lab
有記名茶(WANG TEA)のすぐ隣にあるWangtea Lab。
Wangtea Labは有記名茶が手がけるお店で、お茶を活用したドリンクを飲むことができる場所になっています。
住所:台北市大同區重慶北路二段64巷24號
そのほかの店舗情報については公式サイトで確認できます。
公式サイトは日本語対応しています。
まとめ:歴史ある工場は一見の価値あり
有記名茶は博物館とも言える場所であり、一見の価値があります。
お茶に興味がある方は、ぜひ足を運んでみてください。
以上、工場見学ができる創業1890年の老舗、有記名茶についての紹介でした!