ちょっとした虫刺されや痒みの対処に便利なタイガーバーム。
そんなタイガーバームには、日本でもよく知られている一般的な白色の軟膏のほか、赤色の軟膏も存在します。
この記事ではタイガーバームの歴史に触れつつ、白と赤のタイガーバームの違い、海外におけるお得な購入場所&値段について紹介します。
タイガーバームはどの国の商品?
中国語で虎標識萬金油と呼ばれるタイガーバーム。
タイガーバームは中華圏の商品というイメージが強く、香港や台湾のお土産に定番であるものの、
どの国のブランドなの?
…ということが意外と知られていません。
シンガポールの企業が製造&販売
タイガーバームはシンガポールの虎豹(Haw Par Corporation Limited)が製造・販売する商品です。
中華圏以外でも幅広く取り扱われていて、世界100カ国以上で販売されていています。
タイガーバームの歴史
タイガーバームの商品に興味があっても、歴史自体には興味のない人の方が多いかもしれません。
しかしながら、タイガーバームの歴史や創業者の人となりを知ると、単純にシンガポールをベースにした企業が作る商品という括りではなく、
タイガーバームって面白い!
…となります。
タイガーバームの由来
トラ(Tigar)とヒョウ(Leopard)を意味する虎豹(Haw Par Corporation Limited)という社名は、
- 胡文虎(Aw Boon Haw)
- 胡文豹(Aw Boon Par)
…というタイガーバームの創業者兄弟の名前から取られています。
文虎(Boon Haw)が兄、文豹(Boon Par)が弟です。
中国、ミャンマー、そしてシンガポール
タイガーバームは、単純にシンガポールで生まれたものではありません。
その歴史には中国、ミャンマー、そしてシンガポールが絡んでいます。
文虎と文豹がどのようにしてタイガーバームを作り上げたのかの詳細は以下にまとめているので、興味がある方は各項目をクリックして読み進めてください。
はじまりは中国を飛び出した父
物語のはじまりは創業者兄弟の父親。
二人の兄弟の父親は中国福建省・廈門(アモイ)出身の胡子欽(Aw Chu Kin)。
薬草商を父に持つ胡子欽は、1870年代に親戚がいるRangoon(現在のヤンゴン)で永安堂(Eng Aun Tong)という漢方業を営むお店を開業しました。
永安堂は虎豹の前身企業となります。
その後、胡子欽は結婚し、1882年に文虎(Boon Haw)、1888年に文豹(Boon Par)が誕生しました。*一家にはBoon Leongという長男もいましたが早くに亡くなっています。
ストリートファイターの兄、おとなしい弟
二人の兄弟はヤンゴンで英語教育を行う学校に進学するものの、兄の文虎は問題の多い不良少年になっていました。
ストリートファイター化した兄は喧嘩に明け暮れ、学校で教師に手をあげるという暴力問題を起こしてしまいました。
離ればなれになる兄弟
手をこまねいた父親は文虎を中国の祖父の元に送り返すという決断をします。
一方、兄とは異なり大人しい性格の文豹はヤンゴンに残すことを決めました。
父との別れ&新しい出発
1908年に父である胡子欽がこの世を去り、それにより文豹が父親のビジネスを引き継ぐことになりました。
文豹がまだ20才の時のことです。
しかしながら、文豹は仕事の責任の重さにストレスを感じるようになり、のちに兄の文虎を中国からヤンゴンに呼び寄せました。
その際に弟が兄に言ったことは、
僕はこれから西洋医学を学ぶ。一方、兄さんは漢方を実践・処方する。 西洋医学と東洋医学を掛け合わせることで、どの患者にも対応することができる。
当時のインテリ層は西洋医療に傾倒していたこともあり、西洋と東洋の医学の双方を取り込むことで、ビジネス機会の損失を防ぐというアイディアを提案しました。
タイガーバーム(萬金油)の完成と販売
父亡き後、二人の兄弟は父から受け継いだレシピを再現しました。
そこで完成したものが萬金油(タイガーバーム)です。
ビジネスは大成功をおさめ、1920年代には40才目前に既にヤンゴンの中国人の中で一番のお金持ちになっていた文虎。
野心家である文虎は、自分の名前とタイガーバームを世に知らしめるために、商業が繁盛していたマラヤを目指します。
シンガポールへの進出
1926年にシンガポールで永安堂を設立、マラヤ・タイ・香港・上海などにもビジネスを広げていきました。
1937年には文虎が弟のために、シンガポールにHaw Par Villa(ハウパーヴィラ)を建立。
ハウパーヴィラはシンガポールの観光スポットの一つになっています。
金融業界と新聞業界への進出
文虎は新たな可能性を求め、金融業界と新聞業界に進出することを決めます。
金融業界においてはChung Khiaw Bankの創始者、新聞業界においては星洲日報の創始者として成功をおさめています。
Chung Khiaw Bankは統合の後、現在はUOB(United Overseas Bank)になっています。UOBは東南アジアにおいて、DBS、OCBCに続く第3の規模を誇る銀行です。
星洲日報はマレーシアの有名な中国語新聞です。
戦争と戦後
戦時中の日本軍によるシンガポール占領時はタイガーバームの製造工場を閉鎖。
兄は香港、弟はミャンマーに戻っています。
弟の文豹は1944年に他界し、文虎は戦後、シンガポールに戻り事業を継続しています。
二人の兄弟がこの世を去った後は親族が経営を引き継ぎ、1969年に株を公開して上場、現在に至ります。
赤と白のタイガーバームの違いと比較
タイガーバームの軟膏には、
- 白のタイガーバーム(white ointment)
- 赤のタイガーバーム(plus ointment)
…という2種類の商品があります。
白のタイガーバームは知っていても、「赤のタイガーバームなんてあるの?」とびっくりすることがあるかもしれません。
この2つのタイガーバーム、成分が違うことに加え、使い道が異なります。
まずは、具体的にそれぞれどんな成分が使われているのかについて紹介します。
成分については、マレーシアで販売されているタイガーバームの商品に記載されている成分表に基づきます。
白のタイガーバームの成分
白の軟膏(White Ointment)と呼ばれる白いタイガーバーム。
ミントオイル、カユプテ、カンファー、メントール、クローブオイルなどを調合した、日本でもおなじみのタイガーバームになります。
赤のタイガーバームの成分
白のタイガーバームの基本成分に加え、
- ウィンターグリーンオイル
- シナモンオイル
…という2つの成分が追加されている赤のタイガーバーム。
このことから、Plus Ointment(プラス軟膏)と呼ばれています。
成分の数が異なることに加え、各成分の調合の割合も白と赤のタイガーバームで異なります。
赤白の用途と使用感の違い
- 白のタイガーバーム:クールダウンの用途
- 赤のタイガーバーム:温めの用途
…という用途の違いがあります。
例えば、痛みに対処する時に、症状により冷やすべきケースと温めるべきケースがありますが、それと同じように使いわけをします。
香りについては、赤のタイガーバームはシナモンの香りが強く、白のタイガーバームとは異なる特徴的な香りを放っています。
ミニサイズのタイガーバームがかわいい
海外で販売されているタイガーバームには、トラベルサイズ(ミニサイズ)の商品が存在します。(白と赤、それぞれの商品があります。)
内容量は4gで、大きさは500円玉とほぼ同じサイズになります。
ミニサイズのタイガーバームは、瓶入り商品と比較して少しだけ蓋が開けづらいことが難点ですが、持ち運びに便利な大きさです。
ちなみに、ミニサイズのタイガーバームのパッケージデザインは国により異なることがあります。
シンガポールやマレーシアではシンプルな袋入り、台湾では透明のプラスチックの包装形態になっています。
ミニサイズのタイガーバームは日本では販売されていない商品になるので、マレーシアや香港など、海外旅行に行った時に現地で購入する形がおすすめです。(現地のドラッグストアで購入できます。)
タイガーバームの値段【マレーシアが安い!】
タイガーバームの価格ってどこも同じでしょ?と感じるかもしれませんが、どこで購入するのかによって結構違います。
為替の影響もありますが、商品によっては倍以上値段が異なるということもあります。
ここでは、日本、台湾、マレーシア、シンガポール、香港におけるタイガーバームの値段を比較してみました。(2023年11月時点の価格情報&為替情報に基づきます)
結論を先に言うと、日本、台湾、マレーシア、シンガポール、香港での販売価格を比較した時に、マレーシアが最安になります。
日本の値段
日本ではシミックCMO株式会社が製造販売元になっているタイガーバーム。
一時期販売が中止されていた時期がありましたが、2019年夏に販売が再開されています。
シミックCMO株式会社から販売されている商品は19.4gと30gの2つ。
それぞれの価格(メーカー希望小売価格)は以下の通りです。
- 19.4g:900円(税抜)
- 30g:1,200円(税抜)
日本のどこで買える?
日本では、アマゾンや楽天市場経由で購入する形が便利です。
台湾の値段
台湾のドラッグストアで販売されているタイガーバームの比較をしてみました。
- Cosmedの場合:10gはNT$75、30gはNT$155
- Watsonsの場合:10gはNT$75、30gはNT$155
2023年11月2日時点の為替レート(1TWD=4.65円)で日本円に換算すると、10gは349円、30gは721円。
日本で30g入りのタイガーバームを購入する時と比較して、台湾では40%安く買える
マレーシアの値段
マレーシアにあるドラッグストアのGuardianとWatsonsで販売されている価格を比較してみました。
- Guardianの場合:4gはRM3.0、10gはRM6.0、19gはRM9.0
- Watsonsの場合:4gはRM3.20、10gはRM6.40、19gはRM10.50、30gはRM13.60
2023年11月2日時点の為替レート(1MYR=31.68円)でワトソンズ販売価格を日本円に換算すると、4gは101円、10gは203円、19gは333円、30gは431円。
30gのタイガーバームは、台湾との比較で40%安く、日本との比較で64%程度安い
GuardianでもWatsonsでもセールを行っていることが多く、定価からさらに割引価格でタイガーバームが販売されていることが多いので、かなりお得です。
シンガポールの値段
シンガポールのGuardianとWatsonsで販売されている価格を比較してみました。
- Guardianの場合:4gはSGD1.6、19.4gはSGD4.9、30gはSGD6.3
- Watsonsの場合:19.4gはSGD4.9 、30gはSGD6.3
2023年11月2日時点の為替レート(1SGD=110.16円)でGuardian販売価格を日本円に換算すると、4gは176円、19gは540円、30gは694円。
30gのタイガーバームは、日本との比較で42%程度安い。台湾とはほぼ同じくらい、マレーシアと比較すると割高。
香港の値段
- Watsonsの場合:4gはHKD9.4、19.4gはHKD32、30gはHKD43.50
2023年11月2日時点の為替レート(1HKD=19.22円)でWatsons販売価格を日本円に換算すると、4gは181円、19gは615円、30gは836円。
30gのタイガーバームは、日本との比較で30%程度安く、マレーシアとの比較では50%高い
安さを求めるならマレーシアで購入すべき!
タイガーバームを販売している代表的な国や地域の価格を比較してみた結果、マレーシアが最も安いという結果になりました。
物価の違いや為替レートの影響もありますが、マレーシアにはタイガーバームの工場があり、現地生産していることも安さに繋がっていると考えられます。
安さを求める場合は、マレーシア旅行の際に購入することをおすすめします。
軟膏だけじゃない!タイガーバーム商品の種類
タイガーバームブランドの商品には、軟膏以外に色々なものがあります。
例えば、湿布(Plaster)や首や肩のコリに使用するジェル(Neck & Shoulder Rub Boost)。
タイガーバームの湿布には、COOL(クール)とWARM(ウォーム)という2種類の商品があります。
湿布自体は粘着力が弱めで剥がれやすいので、背中・腰・足・腕などに使う時はサロンパスの方が使いやすいと思います。
軟膏以外の商品でおすすめできるものは虫除けスプレー。
パッケージに「NO DEET」とあるように、ディート(忌避剤:虫除けに使われる化合物)が不使用になっています。
- レモンユーカリオイル
- カンファー
- メントール
…が主成分になっていて、レモングラス系のエッセンシャルオイルが好きな方は「この香り好き〜」と気に入ってもらえると思います。
また、虫除けにはエアゾールタイプの新商品もあります。
まとめ
色々なシチュエーションで使えるタイガーバーム。
自宅に1つあると何かと便利です。
どの国&地域で購入するのかにより価格が異なりますが、日本で買うよりも海外で購入する方が安いケースが多いので、海外旅行先でお土産に買う形がおすすめです。
以上、タイガーバームについての紹介でした!